ネットで誹謗中傷されたらどうする?~②加害者を特定するには?~
前回は、ネットでの「誹謗中傷」が「名誉毀損」になるのはどんな場合かということと、記事を「削除」してもらうにはどうすればよいか、という点につき紹介しました。
(前回の記事はこちら)
・ネットで誹謗中傷されたらどうする?~①誹謗中傷記事を削除するには?~
今回は、誹謗中傷記事に対して、「慰謝料」を求めるにはどうしたらよいか、その前提として、「書き込みをした人物」はどうすれば特定できるか、についてご紹介します。
「慰謝料」を求めることは可能!だけど…
ネットの書き込みが「名誉毀損」に当たる場合、被害者は加害者に対して、「損害賠償」(慰謝料)の支払を求めることができます。
しかし、実際に慰謝料を請求するのは、かなり大変です。
なぜかと言うと、書き込みの「削除」は、サイト運営者に対して求めることも可能ですが、「慰謝料」は、「記事を書いた人」に対して求めていくことになります。
実はここが、慰謝料を請求するのが大変という最大の理由なのです。
ネットの書き込みは、ほとんどの場合「匿名」なので、どこの誰が書いたものかなんてわかりません。
なので、慰謝料を請求するには、まずは「加害者」を特定しないと始まりません。
「書き込みをした人物」を特定するには?
では、「加害者」は、どのように特定すればいいのでしょうか?
言い換えると、どこに問い合わせれば、書き込みをした人物がわかるのでしょうか?
ちょっと複雑なので、説明が長くなります。
後で、「結局どうしたらいいのか」をまとめますので、読み飛ばしてもらっても結構です。
…結論から言うと、「インターネットサービスプロバイダ」に、情報の開示を求めることになります。
「インターネットサービスプロバイダ」というのは、「ISP」と略されたり、単に「プロバイダ」と呼ばれることもありますが、要は、皆さんがインターネットに接続するために契約している会社のことです。
例えば、「NTT」であったり、「ケイ・オプティコム(eo光)」であったり、スマホであれば「ソフトバンク」などのことです。
これらの会社は、当然、どこの誰が自社を経由してインターネットに接続しているかを知っていますので、この「インターネットサービスプロバイダ」に情報の開示を求めればよいというわけです。
…もしかすると、「ちょっと待てよ」というふうに思われた方もいるかもしれません。
当然、「NTT」とか「ソフトバンク」とか、プロバイダは色々あります。じゃあその中で、いったいどの会社に開示を求めたらよいのでしょうか?
これは、書き込みがされているサイトの運営者に、書き込みの「IPアドレス」の開示を求めればわかります。
そんな言葉初めて聞いた、という方もおられるかもしれません。私もそこまで詳しいわけではありませんが、わかる範囲でご説明します。
インターネットに接続する際には、機器ごとに「IPアドレス」という番号が割り振られていて、サイトに書き込みをすると、「IPアドレス」が残ります。
「IPアドレス」だけでは、ネットに接続した個人を特定することまではできません。
しかし、「サイトにアクセスした者が、どのプロバイダから接続したか」、つまり、NTT回線から接続したのか、ソフトバンク回線から接続したのかということは分かるんです。
そこで、サイト運営者に書き込みの「IPアドレス」を開示してもらうと、「どのインターネットサービスプロバイダを経由したか」が分かる、という仕組みです。
まとめ ~加害者を特定する方法~
ややこしい話をしてしまいすみません。
要するに、
①サイト運営者に書き込みの「IPアドレス」の開示を求め、どの「インターネットサービスプロバイダ」から書き込まれたか突き止める。
②判明した「インターネットサービスプロバイダ」に対し、そのIPアドレスが割り当てられていた契約者(=書き込みをした人物)を開示してもらう。
という流れになります。
具体的な方法は、前回ご紹介した「投稿記事の削除請求」と同じく、
A 「テレコムサービス協会」の書式を使って、「開示請求」を行う
B 情報開示を求める裁判を提起する
の二つがあります。
ただ、特に②契約者の情報の開示請求については、プロバイダ側からみると、「契約者の個人情報」を開示することにほかなりません。
そのため、任意に開示してくれる可能性は非常に低いので、プロバイダに「裁判」を起こして情報開示を求める必要があると考えておいた方がいいでしょう。
…そうなんです。加害者を特定するまでに、「裁判」を行わなければならないケースが、実は多いんです。
ご相談をお受けするときも、「実は加害者を突き止めるまでが一苦労なんです」とご説明すると、尻込みをされる方もいらっしゃいます。
ですが、加害者を突き止めなければ、慰謝料を請求することもできませんし、あるいは、書き込みの内容が事実と異なることを認め、謝罪を求めるということもできません。
また、裁判実務上、上記の「書き込みをした人物」を特定するために掛かった調査費用・弁護士費用などは、加害者に負担させることができるとした例も多くあります(東京地裁H24.1.31判決など)。
実際にお悩みの方は、次回ご紹介する、「慰謝料」の金額の見込みなども含め、「どのくらい費用が掛かって」、「どのくらいの賠償が得られるか」の見込みをご説明させて頂きますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
次回に続きます。
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