【今のうちから考えておきたい】共同創業者・共同経営者間のトラブル

当事務所では、様々な起業家様・経営者様からのご相談をお受けしています。

 その中でも、創業から数年くらいの企業様の場合、業種を問わず数多くのご相談を頂くトラブルがあります。

 それが、「共同創業者・共同経営者間のトラブル」です。

 もっと平たく言えば、数人が集まって創業メンバーとして事業を起こした企業様で、創業メンバーや共同経営者の誰かが会社を抜けるときに、深刻なトラブルが発生し、ご相談に来られるケースが非常に多いということです。

 そして、そのトラブルは、ほとんどが創業メンバーが提供した事業資金をどう清算するのかを巡る対立が原因になっていると言っていいと思います。

 創業メンバーが事業に資金を提供する際、大きく分けて「出資」と「融資(貸付)」の2パターンがあるので、この二つに分けて紹介していきたいと思います。

1.「出資」のケース

 まず、 「出資」の場合ですが、出資したメンバーは、その代償として「株式」を取得しているはずです(合同会社などの場合は「持分」ですね。)。

 この「株式」という権利は、メンバーが会社の経営から手を引いたからと言って当然に失われるわけではありません。

 そのため、もしメンバーの一人が経営から抜けたとしても、「株式」を保有している限りは、「株主」として扱わなければなりません。

 「株主総会」にも招集し、場合によってはそのメンバーの同意をもらわないといけない場面が出てくるかもしれませんし、利益が出れば配当を支払う必要があります。

 また、順調に会社が成長し、いよいよIPOだ!とか、M&Aだ!という段階になって、辞めたメンバーの株式が問題となってIPOに支障が出たり、せっかくのM&Aがご破談、ということにもなりかねません。 

 それでも、辞めたメンバーが少数株主なら、まだいい方です。

 辞めたメンバーが過半数以上の株式を持っている場合、役員の選・解任権など会社の支配権はそのメンバーにあるようなものです。こんな状況では、とても安定した経営を行うことは不可能であり、最悪の場合、会社を一から作り直さなければならなくなってしまいます。

 なので、メンバーが経営から抜ける、という段階になって、会社に残る側のメンバーは、「株式」を買い取るための交渉を行うことになります。

 しかし、上場企業と違って、「株価」がはっきりと決まっているわけではないので、非上場企業の株式買取の交渉は、ただでさえ難しい側面があります。

 それに加えて、パートナーシップを解消しようという段階での交渉になるわけですから、買取価格をいくらと定めるかなど、深刻なトラブルが発生することは想像に難くないと思われます。

 このように、辞めたメンバーの「株式」のために、多額の買取代金を負担する羽目になったり、最悪の場合には会社を一から作り直さなければならないという事態にすらなりかねないというわけです。

2.「融資(貸付)」のケース

 また、事業への資金提供を、会社への「融資(貸付)」という形にしているケースもよく見受けます。

 ただ、親しいパートナー同士での貸し借りであるためか、いつまでに返済するのかなど、融資の条件を明確に定めていないケースがほとんどです。

 しかしながら、実は法律上は、返済期日を定めておかないと、貸した側はいつでも全額の返済を一括で求めることができてしまいます(民法591条1項)。

 そのため、抜けたメンバーから、融資した金額の一括での返済を求められ、会社が対応に窮してしまうといったケースがよく見られます。

 もっと言えば、創業メンバーが会社に提供した資金がどういうお金なのか自体はっきりしない(契約書や借用証が作成されていない)、というケースも珍しくありません。

 抜けたメンバーは返済してもらえると認識しているのに、会社は返済しなくていいと認識していた、なんてことがあったら、もう関係修復は不可能なレベルまでもめてしまうことになりかねません。

3.トラブルを未然に防ぐためには?

 共同経営の解消というのは、ある意味「離婚」のようなものだと思います。

 どんな夫婦であっても、結婚して最初のときから離婚のことを考えている夫婦はいないでしょう。

 同じように、創業時からパートナーシップの解消のことを考える共同創業者はいないはずですし、そんなことを話すこと自体気が引けると思います。

 しかし、将来どんなことがあるかはわかりません。もしかすると、ふとしたことがきっかけで、パートナーシップを解消することになるかもしれません。

 その時に、残るメンバーと抜けるメンバーとでトラブルになってしまうと、関係が悪化し、最悪の場合修復が不可能なレベルにまで至ってしまうかもしれません。

 共同経営者ではなくなったとしても、そのメンバーは、今後もビジネスパートナーになるかも知れない人ですし、何より元々は大切な友人であるというケースがほとんどです。

 そんな人との関係を失ってしまうことはあまりにももったいないと、こういった案件を手掛けるたびにいつも思います。

 こんなことにならないようにするためには、まだ関係がうまくいっているうちから、うまくいっているからこそ、今のうちにきちんと共同経営者間でのルールを定めておくことが肝心です。

 「株式」なら、誰かが辞める時に、その株式をいくらで買い取るか、あるいは買取価格の算定方法を、あらかじめ定めて、合意書という形で残しておけばよいのです。

 「貸付」なら、いつまでにどのような条件で返済するのか、あらかじめ契約書などの書類に残しておけばいいでしょう。

 しかし、ただ作ればいいというわけでもありません。

 「どのようなトラブルが予測されるか」、「どのようなリスクが潜んでいるか」など、将来起こりうる事態を的確に予測し、それに対処できる契約書を作っておかなければ意味がありません。

 そのためには、「経営者間でのトラブル」に精通した弁護士の監修を受けながら、契約書の内容を作りこんでいくことが最も適切です。

 当事務所では、何件もの「経営者間トラブル」のご相談を受け、解決してきた実績がございますので、少しでも気になられた方はぜひ、まずはご相談ください。

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