BtoC企業は必ず知っておきたい法律~「消費者契約法」・「特定商取引法」~
世の中には様々な法律があり、その数は約2,000にも及ぶと言われています。
もっとも、例えば「弁護士法」という法律がありますが、(一部の条文を除いて)この法律を守らなければならないのは「弁護士」なので、皆さんが事業を行う上で「弁護士法」を意識する必要は、基本的にはありません。
同じように、「建設業法」という法律は、建設業を行っていない・行う予定もない企業にはあまり関わりはありませんし、食品を扱う事業者でなければ、「食品衛生法」に気を使う必要はあまりないでしょう。
このように、企業ごとの個別的な事情によって、どの法律に注意しておかないといけないかというのも変わってきます。
ただ、一般消費者(Consumer)相手に商品・サービスを提供する企業(いわゆる「BtoC企業」)にとっては、どのような業種・規模の企業であっても、「消費者契約法」と「特定商取引法」は必ず意識しておくべき法律の一つだと思います。
なぜかと言うと、
1.「BtoC」企業であれば、基本的に業種・企業規模などに関係なく適用されること
2.知らずに違反してしまったときに想定されるダメージが大きいこと
などが理由として挙げられます。
少しかいつまんで説明します。
1.「消費者」との取引を行う企業であれば適用の対象となる
「消費者契約法」や「特定商取引法」は、「事業者(Business)」と「一般消費者(Consumer)」 との取引を規制する法律であり、「事業者」側の規模の大小などにかかわらず適用される法律です。
つまり、たとえ小さな会社であっても、あるいは個人事業主であっても、「消費者」との取引を行う企業であれば、「消費者契約法」や「特定商取引法」が適用されるということです。
ところで、「特定商取引法」が適用されるのは、「7つの取引類型=エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室」に限られ、それ以外の業種の企業には関係がない、と思われている方が結構いらっしゃいます。
これは間違いです。
もちろん、これら7業種の事業を展開されている企業の方は、特定商取引法の知識は必須であることは間違いありません。
7つの業種でなくても、特定商取引法が定める取引類型・販売方法(例えば訪問販売、通信販売など)に該当すれば、特定商取引法は適用されます。
2.違反すると大変な目に遭うことも
ところで、法律の基本的な考え方として、「法の不知はこれを許さず」、というものがあります。
つまり、「そんな法律があるとは知りませんでした」は、言い訳にはなりません。「特定商取引法」を知らなかった、あるいは関係がないと思っていたとしても、裁判所などで取引が「特定商取引法」の対象であると判断されてしまうと、その法的な効果を受けてしまう、ということです。
では、もし、この「消費者契約法」や「特定商取引法」が適用される事業であるにもかかわらず、違反してしまった場合、どんな事態が想定されるでしょうか。
これらの法律の何が怖いかというと、「取消権」や「クーリングオフ」といった非常に強力な権利を消費者に認めているところにあります。
誤解を恐れずに言えば、「取消権」や「クーリングオフ」ができるということは、「取引を一方的に白紙に戻される」可能性があるということです。
それはつまり、せっかく受け取った代金を返金しなければならなくなる、ということです。
いくつか、事例をご紹介しましょう。
①学習塾を経営するA社は、入塾して数か月授業を受けた生徒の親から、特定商取引法に基づき入塾契約を「クーリングオフ」するとの通知を受けた。A社は、特定商取引法で義務付けられた「契約書面」を生徒に交付していなかったため、入塾契約から数ケ月が経っているにも関わらずクーリングオフが認められ、実際に授業を行った分も含め、受け取った授業料をすべて返金するよう命じられた(東京地裁平成26・11・21判決)。
②「パチンコ攻略情報」を販売するB社は、問い合わせをしてきた消費者に、「100パーセント絶対に勝てるし、稼げる。」、「『パチンコ攻略情報』代金は数日あれば全額回収できる。」などと告げて勧誘し、購入にこぎつけたが、「不確実な事項について断定的判断を提供した」ことが消費者契約法4条1項2号に該当するとして契約を取り消され、代金の返金を命じられた(東京地裁平成17・11・8判決)。
③資格学校を経営するC社は、資格講座を受講して試験に合格すれば「顧問契約」を結ぶことができ、答案添削などの仕事を紹介することができると勧誘して受講契約を得たが、仕事を紹介できると言って顧客を勧誘することは特定商取引法51条(専門用語で業務提供誘引販売取引といいます)に該当するとして、クーリングオフが認められた(名古屋地裁平成14.6.14判決)。
いかがでしょうか。
これらの事例はほんの一部ですが、BtoC企業にとってみれば、
①「学習塾」など、7業種に該当する事業を展開している企業はもちろん、
その他の企業も、②販促・セールスのやり方や、③ビジネスモデル自体を考えるうえにおいても、「消費者契約法」や「特定商取引法」に気を付けておかないと、せっかくの契約を後から白紙に戻されるリスクが潜んでいる、ということが言えると思います。
ただ、法律を一つ一つ、一条ずつ調べて、問題がないかチェックしていって…というのは、一度トライしてみて頂ければわかりますが、気が遠くなるほど大変な作業です。
当事務所では、事業内容、消費者との取引(契約)の内容、販促方法などをヒアリングして、「消費者契約法」や「特定商取引法」との関係で問題になりそうなところがどこかをピックアップし、契約書の内容など何を改善すればリスクヘッジできるかなどをアドバイスさせて頂くことが可能ですので、お悩みの方はぜひご相談ください。
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