まずは「著作権の守備範囲」を理解しよう~競合・パクリへの対策②~【起業家・創業者向け】

前回、「法律はパクリから当然には守ってくれない」という話をしました。

じゃあどうすればいいのか?ということで、今回から
「権利化」するというアプローチについて解説していきます。
これは、法律は「当然には守ってくれない」のなら、
法律が守ってくれる「権利」を取得してしまえばいい、という話です。

特許権、商標権、意匠権、…などのことです。
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

ここで最も大切なのは、
それぞれのメニューの「守備範囲」を理解して
「最適な権利」を取得する必要がある、ということです。

抽象論をお伝えしても仕方ないので、僕のクライアントで最も多い
「コーチング・コンサルティング業」や「教室・サロンビジネス」
を念頭に置きながら、具体的な考え方を整理してみようと思います。

★「著作権」の守備範囲を知ろう

まずは、「著作権」の守備範囲を理解するところから始めるのが
一番いいと思います。

なぜかと言うと、著作権は特許権や商標権と全く違う特徴があるのです。
ご存知でしょうか?

それは、「勝手に発生する権利」であるということです。

著作権は、「著作物」を創作した時点で、何の手続きも必要なく発生する権利です。

書籍、ブログの執筆はもちろん、HPに掲載した文書・デザイン、
あるいはセミナーでの講演内容やプレゼン資料にも、創作した時点で著作権が発生します。
(ただし、「著作物」であると認められる必要があります。これはこれで一大論点で、色々な事例があって面白いのですが今回は割愛します。
 クライアント様向けの勉強会ではこの辺りの事例紹介などもしていますので、ご興味があればお問い合わせください。)

これに対し、特許や商標は特許庁に「出願」して、「登録」されてはじめて権利が発生します。

言ってしまえば、「著作権」は特に何もしてなくても行使していけるので、
まずは「著作権」の守備範囲を理解し、それでは足りない部分をどう補うか
という順番で考えよう、というわけです。

さて、著作権は、書籍・ブログなどの文章、デザイン、音楽、動画、講演などの「成果物」に対する権利です。
「目に見える」「耳に聞こえる」ものをカバーする権利、
と考えてもらったらよりわかりやすいかもしれません。

「ブログの内容を勝手に転載された」
「HPのコンテンツを丸パクリされている」
「セミナーを録音されて、動画投稿サイトに掲載されている」

このようなケースでは著作権が有効に機能します。

しかし、1点十分に注意しておいてほしいことがあります。
 

実は、著作権は「成果物」の背後にある
「ノウハウ」「アイデア」には効果が及ばないんです。

「江差追分事件」という最高裁の有名な判例がこのことを指摘しています。
ものすごく簡単に紹介しますが、興味がある方はぜひ調べてみて下さい。

事案は、書籍の内容とTV番組のナレーションが類似しており、
著作権を侵害するとして、著者がTV局などを訴えたという事案です。

著者側はこのような主張を展開します。
「ナレーションには、原告書籍に出てくる独自の発想が含まれている。
 書籍を改変して構成されたとしか考えられない」

しかし、最高裁は原告の主張を退けます。
「書籍の具体的な文章とナレーションの文言はほとんど一致していない。
 原告独自の発想がナレーションに含まれているとしても、
 それはアイデアが共通しているだけで、著作権の問題ではない

…わかったようなわからないような感じですよね(笑)

「アイデア」と「表現」の境目は著作権をめぐる多くの裁判で争われるポイントであり、
正直、明確にラインが引けるような話ではないのです。

(「共通するのがアイデアか、表現か」が著作権の裁判の成否を決めるということを知っておくと、著作権絡みの裁判のニュースとかが結構わかるようになります。

少し前に話題になった「金魚電話ボックス」を巡る事例も、まさにこの点が問題となっています。)

ただ、「ノウハウ」「アイデア」は著作権の守備範囲ではない
ということは抑えておいていただきたいのです。

これを「コーチング・コンサル」や「教室・サロンビジネス」に当てはめてみます。

文章、資料、動画といった「目に見える、耳に聞こえる」コンテンツのパクリには、

著作権で対抗することができるでしょう。

しかし、それはコンテンツの一部にすぎませんよね。

「こういう悩みには、こういう解決方法がある」
「このタイプには、こうアプローチすれば刺さる」
あるいは、
「この客層にこういうコンテンツ提供をすればビジネスとして成り立つ」

というような「ノウハウ」「アイデア」
あるいは「新規性・独自性」、「特定の顧客層への専門性」といった部分は
「著作権」ではカバーされない可能性が高い、ということになるわけです。

言い換えれば、文章や資料などの成果物の流用がなければ、
ノウハウやアイデアをパクられても、著作権では対抗できない
ということです。

これでは「守備」としてはまったく不十分だということが
お分かりいただけると思います。

なぜなら、成果物の背後にあるノウハウ、アイデア、専門性や新規性といったものこそ、

コンテンツの本質的な「強み」になっていることが多いからです。

では、著作権では足りない部分をどう補っていくか。
無形商材ビジネスの場合、特に

「商標」

を権利化することが非常に有効なアプローチの一つになります。

これについては、次回解説していきたいと思います。

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