起業家/ベンチャー企業が顧問弁護士を雇うメリットとは?
ルースター法律事務所 代表弁護士の山本です。
今回は、特に「起業家・ベンチャー企業」に絞って、顧問弁護士を雇うことのメリットについて解説します。
「顧問弁護士とかつけた方がいいのかなぁ…」と悩んでいる方には参考になると思いますので、ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。
1.顧問弁護士の一般的なメリット
まずは、一般的に顧問弁護士を雇うメリットだと言われているものをご紹介します。
① 気軽に法律問題や困ったことを相談できること
② 企業法務に精通した弁護士からアドバイスを受けられること
③ トラブル発生時に即座に相談して対応が可能
大体こんな感じでしょうか。
要するに、「困ったときになんでも相談できるよ!」ということが顧問弁護士を雇うメリットだと説明されることが多いような気がします。
でも、それって起業家やベンチャー企業にとって、本当に顧問弁護士料を払ってまで必要なことなのでしょうか?
2.起業家・ベンチャー企業に顧問弁護士は不要?
例えば、法律や業界規制の問題により事業が成立するか自体を慎重に検討しなければならない場合や、組織運営や資金調達に関して複雑なスキームを採用する場合など、まさに「専門的な知識が必要」なケースでは、「その分野に精通し、困ったときになんでも相談できる弁護士」を顧問弁護士として雇うことには大きなメリットがあるでしょう。
逆に言えば、このような難しい問題でもなければ、困ったときに相談できる「だけ」の弁護士に、ベンチャー企業が毎月顧問料を支払うメリットはないんじゃないかと僕は考えています。
昔のように、弁護士の数自体が少なく、相談できる弁護士を見つけるのも一苦労……。
というような時代であれば別ですが、今やネットで検索すればすぐに弁護士にアクセスできる時代です。
また、巷の異業種交流会等に行けば、割と普通に弁護士は見つかると思います。
言うまでもなく、ベンチャー企業にとって予算は有限です。
困ったときに相談できる「だけ」が価値なのであれば、貴重な予算をわざわざ割くほどのものではないと考えています。
3.それでも、起業家・ベンチャー企業「こそ」顧問弁護士が必要だと考える理由
しかし、僕はそれでも、起業家/ベンチャー企業”こそ”、顧問弁護士の力を活用すべきだと考えています。
その理由を、「落とし穴」、「ルール作り」、「アウトソース」の3つのキーワードから解説していきます。
① ベンチャー企業の目の前には「失敗の落とし穴」が無数に潜んでいる
かの野村克也監督は、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を座右の銘としていたそうです。
これはベンチャー企業にとっても当てはまります。よく理由はわからないが成功した企業はあっても、失敗した企業には必ず原因があります。
そして、多くの起業家/ベンチャー企業を支援してきた経験から言えるのは、「これにハマったら取り返しがつかなくなる」というレベルの失敗パターンや落とし穴が無数に潜んでいるということです。
そもそもグレーな商材や市場に参入してしまう、うまい話や怪しげな投資話に乗せられて起業してしまう、違法なビジネスモデルを組んでしまうなど、起業段階からすでに失敗しているパターン。
大手企業が提示してきた自社に極めて不利な契約書をそのまま結んでしまう、共同起業するメンバーとの取決め内容や株式分配を間違えてしまう、契約書を結ばずに受注したために代金を回収できなくなってしまうなど、契約書を軽視して失敗するパターン。
商標権などを取得していなかったためにパクリ・模倣が蔓延してしまう、広告運用や顧客対応を間違えネットで炎上してしまう、自社従業員による不正行為や引抜きを止められずに崩壊してしまうなど、守備固めを後回しにして失敗してしまうパターン。
こうした落とし穴にハマらないようにするためには、多くの起業家支援の実績を積み、失敗パターンを熟知している弁護士を参謀として置いておくことが最も有効です。
② ベンチャー企業には「ルール作りのプロ」が必要
超優秀な社長なのになぜか会社は伸び悩んでいるというパターンもあるあるです。
個人プレーではいつか限界が来ます。会社を伸ばすには「チーム」を作らなければなりません。
では、「良いチーム」とは何でしょうか?
サッカーでは、相手選手をどのようにマークするか、どのタイミングでボールを奪いに行くかなどの「約束事」を選手全員が共有し、実行できるのが強いチームだ、というような話を聞いたことがあります。
これは企業運営にも通じると思っています。各々が好き放題に動いている組織と、会社として何を目指すのか、顧客にどんな価値を提供するのか、そのためにメンバーがどのように振舞うべきかを明確に定義し、それを実行している組織とでは、どちらの方が伸びるでしょうか?
おそらく、ほとんどの方は後者だと考えるのではないでしょうか。
つまり、良いチームを作るためには、「良いルールを作り、運用すること」が非常に重要です。
ガッチガチに縛れば良いというものではありません。厳しすぎるルールや、会社が得することしか考えていないルールは、かえってルールの形骸化やチームの機能不全を招きます。
厳しすぎず、かと言って好き放題は許さないというバランス感覚が極めて重要です。僕のクライアント様の中でも会社を急成長させている方は、このあたり絶妙なバランス感覚を持っています。そんな方であっても、「こういうルール設定はやり過ぎではないか?」などを色々な専門家に相談したうえで決定しています。
起業家やベンチャー企業は、これからチームを作っていかなければならないという重大なフェーズを迎えていると思います。
だからこそ、「ルール・規則作りのプロ」の力を活かすべきなのです。
③ ベンチャー企業は法務機能を「アウトソース」化すべき
大企業には、「法務部」など契約書のリーガルチェックや法律調査を専門に行う部署があります。
弁護士資格を持つインハウスロイヤーを抱える企業も多くなっていますし、法務部がすぐにアクセスできる顧問弁護士もいるでしょう。
このように、大企業には、他社との契約書に自社に不利な条項がないかなどをチェックする体制が整っています。
これに対し、特に創業から間もないベンチャー企業には、そんな余裕はないことがほとんどです。
大抵は、総務や経理など事務方を一手に担う1名~数名の社員がついでに契約書のチェックも任されている、というのが実情ではないでしょうか。
言うまでもなく、これでは契約書チェックなどに十分なリソースを割くことはできません。
ましてや、自社の契約書ひな型や新規サービス展開に伴う利用規約をイチから作ったりとなると、とてもではないですが手に負えないことと思います。
かと言って、法務の専門人材を雇うとなると、おそらくハイクラス人材であり相当なコストになると見込まれるため、これも現実的ではなさそうです。
だからこそ、ベンチャー企業の法務部門は「アウトソース」化することが最も合理的な方法と言えます。
起業家/ベンチャー企業支援に精通した弁護士に顧問として入ってもらい、契約書作成やリーガルチェックを外注してしまえばいいのです。
自社で法務に詳しいハイクラス人材を採用する場合のコストが仮に月50万円だとすれば、顧問弁護士に月10万円を払ってアウトソース化した方が明らかに経済的です。しかも、弁護士が持つより専門的な知見やノウハウ、顧問弁護士を雇っているという信用など、多くの副次的なメリットも得ることができます。
ただし、注意すべきなのは、ベンチャー支援の実績をきちんと積んでいて、なおかつアウトソースとして十分に機能する弁護士を選ばなければならないという点です。
特に、契約書作成やチェックなどは別途手数料を請求するという事務所が大多数ですので、顧問料の範囲でどこまで対応してくれるかはきちんと確認しておく必要があります。
(顧問料の相場や顧問契約の注意点は下記の記事でも解説していますので、こちらも合せてご覧ください。)
4.まとめ
以上の通り、ベンチャー企業にはハマったら取り返しがつかなくなる「落とし穴」があること、チームを構築するうえで「ルール作りのプロ」の力が必要であること、リソースが限られているからこそ「アウトソース」としての顧問弁護士が必要であることから、起業家/ベンチャー企業こそ顧問弁護士を雇うべきであると考えています。
ルースター法律事務所では、これらがベンチャー企業支援を専門とする弁護士の大事な大事な役割であると考え、日々ノウハウの習得やサービスの向上に努めています。
下記の記事では、実際のところどんな感じでサポートを行っているのかを簡単にご紹介していますので、よければご覧ください。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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