「イベント企画運営委託契約書」のポイントとひな型を解説

こんにちは。ルースター法律事務所 代表弁護士の山本です。

今回は、イベントの企画・運営を第三者に依頼するうえで、どのような契約書を締結すればよいかについて解説します。

イベントの企画・運営については、以前に【イベント開催に必要な契約書・規約とそのポイント・ひな型を解説】という記事でも解説しています。
その際は、スポンサー・協賛者との契約、出演者との契約なども含め、イベント開催全般で必要となる契約書等をざっくりと解説しましたが、今回はその中でもイベント運営業者に運営を委託する際の契約書に絞った内容となっています。

基本的には、イベントを主催することになった企業が、そのイベントの企画・運営を他社に依頼する際に、どのようなリスクに気を付けるべきか、そのリスクをなるべく減らすためにはどのような契約条項を作っておくべきかについて、具体的な条項例を示しつつ解説することをコンセプトとしています。
したがって、主にイベント主催者側の立場に立った解説となっていますが、適宜イベント運営業者側の視点からも補足説明を加えていますので、どちらの立場であっても参考にできる内容になっていると思います。
また、すでにイベント企画運営契約書のひな型を作成済みの方も、必要な条項の抜け漏れがないかのチェック等にもご活用いただけるのではないかと思っています。

イベント企画運営委託に関する契約書でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、本記事ではイベント企画運営を依頼する側(イベント主催者)を「委託者」、依頼を受けて企画運営を遂行する側(運営業者)を「受託者」と呼称します。

委託業務の内容・範囲

イベント企画運営委託契約は、企画運営という「仕事」を第三者に依頼する契約であり、「業務委託契約」の一種に該当すると言えます。
したがって、「業務委託契約書」の解説記事でも述べた通り、依頼の対象となる仕事の内容や範囲を明確にすることが重要であり、契約書を作成する上での出発点となります。

特にイベント企画運営において依頼の対象となり得る業務の内容は、イベントの企画、会場の手配や設営、撤去、当日の進行、出演者のキャスティング、イベントの広報・宣伝活動、アンケート実施など、非常に多岐にわたる上に、一つ一つの業務に相応の手間や費用が生じることとなります。

そのため、「会場手配までやってもらえると思っていたのに、別途費用がかかると言われた」「広報・宣伝までは依頼していなかったのに許可していない宣伝活動をされ、料金を請求されてしまった」など、「業務の内容・範囲」を巡るトラブルが生じる可能性があります。

こういったトラブルを防ぐために、契約書上も受託者の業務範囲がどこまでなのかを可能な限り明確にしておくことが非常に重要です。

まずは、対象となるイベントの概要と、大まかでもよいのでどこまでの業務が委託の対象となるのかを明確にします。
以下の条項例を参考に、どこまでの範囲を委託するのかの認識をすり合わせたうえで、契約書にも記載しておきましょう。

第X条(業務委託)
1. 委託者は、下記のイベント(以下「本イベント」という。)を実施するにあたり、受託者に対して、次項各号に定める業務(以下「本件業務」という。)を委託し、受託者はこれを受託する。
 名称:●●コンテスト
 日程:●年●月●日開催予定
 会場:●●
 趣旨:●●を対象としたコンテスト及び表彰を実施することにより、●●に関する情報発信及び広報活動を行い、●●の推進・普及に資することを目的とする。
2. 委託者が受託者に対して委託する本件業務は次の通りとする。
(1) 本イベントの企画に関する業務
(2) 本イベントの会場の借上げ、設営及び撤去に関する業務
(3) 本イベント会場において設置する展示物、グッズ、資料、パンフレット等の製作
(4) 本イベントにおける受付案内、運営進行
(5) 本イベントの広報宣伝活動
(6) 本イベント出演者のキャスティング、出演手配
(7) 本イベント参加者に対するアンケート実施業務
(8) その他前各号に付随関連する業務

これに加えて、どのようなイベントとするのか、どのようなスケジュールで開催準備を進行していくか、会場のレイアウトや人員配置はどうするか、出演者はどうするのか、広告宣伝はどの媒体で行うかなど、詳細な事項は都度決定し、決定した内容に従ってイベント運営を実施していく必要があります。

この点を予めすべて決めておくのは非常に難しいため、期限を区切ってイベントの「実施計画書」を作成し、これに従って運営を行うように義務付けるという方法を用いるケースがよく見られます。

以下、実施計画書の作成・提出及び実施計画に基づいた運営を実施させる場合の条項例です。

第X条(本件業務の遂行)
1. 受託者は、本件業務の遂行に際し、委託者の指示及び本契約に定める受託者の義務を遵守しなければならない。
2. 受託者は、本契約締結日から●日以内に、本イベントの趣旨に沿った企画の検討を行い、本イベントの概要、出演者、広告宣伝、会場レイアウト、人員配置、当日の運営進行、開催前準備、開催後撤収等、本イベントの開催に関する一切の事項に関する内容、仕様、期日等を記載した実施計画書を委託者に提出し、委託者の承認を得なければならない。
3. 受託者は、前項に基づき承認を得た実施計画書に従って業務を遂行するものとする。

第X条(本件業務の完了)
1. 受託者は、前条に定める実施計画書に定める内容、方法、期限等に従って本件業務を完了し、双方協議の上で定める方法により業務の完了を委託者に報告するものとする。
2. 委託者は、前項の報告を受けた後●●日以内(以下「検査期間」という。)に、実施計画書に定める内容、基準等に適合するか否かの検査を行うものとし、検査に合格したときは、受託者に対して書面により(電磁的方法による場合を含む。)検査合格の通知を行い、これをもって検収完了とする。
3. 検査の結果、本件業務が適正に遂行されていないことが判明した場合、委託者は、受託者に対して遅滞なくその旨を通知するものとする。
4. 前項の場合、受託者は、別途委託者が定める期間内に、自己の費用と責任において履行内容の追完、修正を行った上で再度検査を受けるものとし、以後同様とする。

受託者側の立場からは、何度もやり直しをさせられたり、当初は要求されていなかった内容を追加で求められたりといった事態はなるべく避けたいと考えるのが通常かと思われます。
したがって、別紙や実施計画書等で仕様に関する事項や受託者が責任を負う範囲を明確に定めたり、「検査期間内に不合格通知がなされない場合は業務が完了したものとみなす」という規定(みなし合格規定)を設けるなどの調整を行うことが望ましいでしょう。

委託料・費用に関する事項

委託料(受託者に対する報酬)に関する定めが必要であることは言うまでもありませんが、イベント運営委託契約においては、イベント開催に要する諸経費の取扱いに特に注意して規定しておく必要があります。

イベント開催には会場使用料や資材、機材費、美術費、撮影費、広告宣伝費、出演者への出演費など、様々な諸経費が発生します。
かつ、その金額が大きくなることも珍しくありません。

委託者(主催者)側としては、事前に立てた予算を超過した経費が発生することはなるべく避けたいところです。したがって、すべての諸経費を含めた委託料が予め決まっている状態が通常は望ましいと言えるでしょう。

以下は、すべての諸経費を含めた委託料を一括で支払う(別途経費の負担は発生しない)と定める場合の条項例です。

第X条(委託料)
1. 委託者は、受託者に対し、本件業務の対価として●●●円(税別)を支払うものとする。
2. 委託者は、前項に定める委託料を、●●年●●月●●日までに、受託者が指定する銀行口座に振込送金する方法により支払うものとする。なお、振込手数料は委託者の負担とする。
3. 第1項に定める委託料には、会場使用料、交通費、必要となる資材及び機材費、出演者との契約に係る費用等、本件業務に係るすべての諸経費が含まれるものとする。

他方、受託者側としては、諸経費がどの程度発生するか読み切れないケースや、出演者に支払う出演料など委託料とは別途に委託者に負担してほしいと考える経費が存するケースもあり得ます。このような場合には、「●●費については、委託者が委託料とは別途に負担する」というような条項にしておく必要があります。

なお、支払期日については、委託者としてはイベント終了後の後払い、受託者としては先払いを求めたいというケースが多いのではないかと思います。
特に諸経費が委託料に含まれる条件を採用する場合、諸経費の支払いは受託者が行うことになります。委託料が後払いだと、諸経費の支払いを先行して行わなければならなくなるケースも想定され、キャッシュフロー上好ましくありません。

したがって、両者の均衡を取って、「契約締結時に半金、イベント終了後に半金」と言ったように、委託料を分割して支払う条件を設定するケースも非常に多く見られます。
あるいは、「実施計画書提出完了時点で●円、広告制作完了時点で●円、イベント開催完了時に●円」といったように、業務の進行度合いに応じて段階的に委託料を支払うといった取決めをすることも考えられます。

いずれにせよ、金銭を巡る認識の相違やトラブルはイベントの円滑な運営の大きな妨げになります。契約締結時には詳細を決定せずに走り出した結果、いざ本格的に動くという段階になってから、多額の諸経費をどちらが負担するかを巡ってトラブルとなることも十分に想定されます。最悪の場合折り合いがつかず、開催自体を白紙に戻さなければならなくなってしまうケースすらあり得ます。

そのため、委託料や諸経費を巡る問題は、どのような形が自社にとってベストか、どこまで譲歩できるかを慎重に検討し、相手方ともしっかりと協議したうえで、契約書に記録を残しておくようにすることを強くお勧めします。

権利関係の処理/出演者との調整

イベントを運営するにあたっては、広告物、グッズ、パンフレット等の各種成果物が生じる場合があります。
このような成果物は、イベント終了後、記念グッズ等として配布・販売したり、別イベントで流用したり、後日ホームページやSNS等で公開したりするケースも少なくありません。

こういった利用に支障とならないように、成果物の権利関係を明確にしておく必要があります。
また、第三者からの権利侵害等のクレームが発生することを防ぐために、成果物について第三者の権利を侵害していないことを保証する規定を設けておくことも効果的です。

以下は、成果物に関する著作権等の権利はすべて委託者に委託させるとともに、万一権利侵害等が発生した場合は受託者が責任を負うとする場合の条項例です。

第X条(知的財産権)
1. 本契約の履行に伴い受託者が制作した成果物に係る特許権、著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)その他一切の知的財産に関する権利は、全て権利の発生と同時に委託者に移転するものとする。なお、受託者から委託者に移転する著作権の対価は、委託者が受託者に支払う委託料に含まれるものとする。
2. 受託者は、委託者及び委託者の指定する第三者に対し、著作者人格権を行使しないものとする。
3. 受託者は、本件業務の遂行過程において、第三者の知的財産権及び所有権その他一切の権利を侵害しないことを委託者に対し表明し、保証するものとする。
4. 成果物に関連して第三者の権利を侵害することその他の理由により、委託者又は受託者が第三者から何らかの請求、異議申立てを受け、又は訴訟が提起される等の紛争が生じたときは、受託者は、自らの責任と費用でこれを解決するものとし、委託者に何ら損害を及ぼさないものとする。

逆に受託者の立場としては、権利移転の範囲を狭めたり、権利移転の対価分を委託料に乗せてもらうなどの対応が考えられます。
第三者への権利侵害の点については、「受託者が知る限り」「受託者の責めに帰すべき事由」などの文言を加えることで、まったく想定し得なかったトラブル等については責任を負わないこととするなどの調整を行うことが考えられるでしょう。

なお、イベントにタレント等を起用する場合は、権利関係につきより慎重な対応が求められる場合が多いと思われます。

特に、イベントの広告宣伝を行う場合に出演者の肖像等を用いてよいか、イベントの模様を撮影した写真・動画等を後日SNS等で公開してよいか等については、事前に確認しておいた方がよいでしょう。

この点、出演者(または所属事務所)と直接出演に関する契約を締結する場合にはその際に調整を行うことになりますが、イベント運営会社(受託者)を通して出演を依頼する場合、出演者または事務所と直接出演に関する契約を結ぶことはあまりないと思われます。

したがって、受託者に対して、広告利用や公開につき出演者から承諾を得ていること、または承諾を得られるように最大限努力を行うことを保証させ、万一利用できない場合は委託料の減額を行うことができると言ったような条項を設定しておくことも一考です。

以下は、受託者に出演者の出演や成果物の使用についての承諾に向けて最大限努力する義務を課すとともに、受託者の責任により出演等が不能となった場合には委託料の減額を求めることができるとの内容の条項例です。

第X条(出演者との調整)
1. 受託者は、別途実施計画書において定める出演者を本イベントに出演させるよう、最大限の努力をするものとする。
2. 受託者は、出演者の肖像等を本イベントに関して制作する広告物及び本イベントへの出演により制作された画像、動画等のコンテンツ(以下「本件広告物等」という。)を、以下の用途により使用回数の制限なく使用することにつき出演者からの承諾を得るよう、最大限の努力をするものとする。なお、本件広告物等の使用に関する詳細については、別途実施計画書において定めるものとする。
(1)テレビ広告、ラジオ広告(有線放送、衛星放送を含む。)
(2)新聞広告、雑誌広告
(3)屋内・屋外広告、交通広告(ポスター、看板、ステッカー)
(4)通信ネットワーク広告(Webサイト上での動画配信、SNSへの投稿を含む。)
(5)その他の販売促進物(冊子、資料、ダイレクトメール、ノベルティ)
(6)各種広告コンベンションへの出展又は応募、広告特集等の番組又は記事への提供等
3. 受託者の責めに帰すべき事由により出演者の本イベントへの出演または本件広告物等の使用が不能となった場合、委託者は当該業務に対応する委託料の減額を求めることができるものとする。

受託者側としては、出演や広告利用の可否は出演者側の事情や不測の事態、あるいは予算等により左右される場合も多いため、委託料減額にまで応じるべきかどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。

イベントの内容変更/中止に関する事項

イベント運営委託契約は、特定の日に特定のイベントを実施することを前提として締結される契約です。

しかし、様々な事情により、当初予定していた通りの日程にイベントを開催することが不可能となってしまう可能性も否定できません。

2021年から2022年にかけて、コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言の影響により多くのイベントが開催延期・中止となったことはまだまだ記憶に新しいところではないでしょうか。私自身も当時、イベントが中止となったことによる損害(すでに発生した費用など)をどちらが負担するのかを巡ってトラブルになっているというような相談が多く寄せられた記憶があります。

もちろん、予定通りにイベントが開催されることが望ましいことは言うまでもありません。
しかし、現実問題として、イベント開催ができなくなってしまうことは十分に起こり得る事象です。しかも、イベント運営委託契約において想定される最悪のリスクの一つと言っても過言ではありません。

したがって、イベント開催は不可能または困難となってしまった場合にどのように対応するかについては、相手方ともしっかりと事前に協議したうえで、契約条件にも落とし込んでおくことが重要です。

以下は、天変地異や伝染病の蔓延等の不可抗力が生じた場合ややむを得ない事情により出演者の出演が不能となった場合に、開催日や開催方法の変更とそれに伴う委託料の変更を行うことを基本的な方針としつつ、一定期間不可抗力が継続する場合にはイベントを中止することが可能とする内容を定めた条項例です。

第X条(本件業務または実施計画の変更)
1. 委託者及び受託者は、相手方の書面による承諾がない限り、第X条に基づき承認済の実施計画を変更することはできない。ただし、以下の各号に定める事由が生じた場合には、委託者及び受託者は、相手方に対して本件業務または実施計画の変更を申し入れることができ、相手方は合理的な理由がない限りこれを拒否することはできないものとする。
(1) 地震、台風、津波その他の天変地異、伝染病の蔓延、戦争、暴動、内乱その他当事者いずれの責めにも帰すことができない事由(以下「不可抗力」という。)により、本件業務を実施計画書に定めた内容・期日に実施することが困難と認められる場合
(2) 当事者いずれの責めにも帰すことができない理由により、実施計画書に定めた出演者の出演が困難または不能となった場合
2. 前項但書に基づく本件業務または実施計画の変更により本件業務の遂行に要する費用が増減する場合は、委託者及び受託者は協議の上、双方の合意に基づき第X条に定める委託料を変更することができるものとする。

第X条(本件業務の中止)
1. 委託者及び受託者は、不可抗力により本件業務を遂行することが不可能と認められる場合または本件業務を遂行することが困難な状態が●ヶ月以上継続することが見込まれる場合には、相手方に対して、本件業務の中止を申し入れることができ、相手方は合理的な理由がない限りこれを拒否することはできないものとする。
2. 前項により本件業務が中止された場合、委託者及び受託者は、相手方に通知することにより、直ちに本契約を解除することができる。この場合において委託者は受託者に対して、本件業務中止時点までの委託業務の遂行に対する対価について、合理的な根拠をもって算定し、その算定した価額を支払うものとし、それ以外には委託者及び受託者いずれも相手方に対して損害賠償その他名目の如何を問わず一切の支払義務を負わないものとする。

不測の事態が発生した場合、直ちにイベントを中止とするのではなく、日程延期や開催方法の変更など、何とかイベントを開催する方向で調整することを試みるのが通常かと思われます。また、発生した事象の性質や程度、発生のタイミングや計画の進捗状況、回復の見込みなども考慮して、臨機応変に対応することが求められます。

その意味で、契約締結段階では、金額等を含め詳細な処理方法を決定することは難しいですし、決めた内容が実際の事象への対応方法として有効とも限りません。

とは言え、協議の土台すらない状態だと、そもそも延期や開催方法の変更で対応するのか、それとも中止にするのかの議論から始めなければならず、そこに委託料をどうするのかの問題が絡んでくると、早期に対応方針を決定することは非常に難しくなってしまいます。

したがって、いざというときに迅速かつ臨機応変に対応するためにも、不可抗力事態が生じた際の基本的な方針は定めておくことは重要だと思います。

契約終了に関する条項

上記の外部的要因(不可抗力)によりイベント中止を余儀なくされる場合のほか、相手方が業務遂行を怠ったり、必要な支払いを怠るなどの理由により契約を終了させたいと考える場面も想定されます。

また、事業方針の変更や予算の問題など、自社の都合により一度企画したイベントの開催を白紙に戻したいと考えることもあり得るでしょう。

したがって、①相手方に契約違反や信用不安などがあった場合と②自社都合によりイベントを中止する場合の2パターンにつき、どのような条件で契約を終了させることができるか(あるいはできないか)が決まっていることが望ましいと言えます。

①まず、相手方に契約違反や信用不安が生じた場合に備えては、契約解除条項が設けられることが通常です。

契約解除により、委託者であれば委託料の支払義務、受託者であれば委託業務の実施義務など、契約上の義務から逃れることが最大の目的です。
加えて、契約解除を余儀なくされたことにより受けた損害の賠償を相手方に請求できるようにしておくことも必要です。

具体的には以下のような条項となります。なお、第2項の解除が可能となる事由(解除事由)については、業務委託契約書の解説記事をご参照下さい。

第X条(解除)
1. 委託者及び受託者は、相手方が本契約又は個別契約に違反したときは、書面により当該違反状態を是正するよう催告するものとし、当該催告後相当期間が経過してもなお是正されない場合には、相手方の帰責事由の有無にかかわらず、本契約又は個別契約の全部又は一部を解除することができるものとする。
2. 委託者及び受託者は、相手方が次の各号の一に該当する場合、相手方の帰責事由の有無にかかわらず、何らの催告なしに直ちに本契約又は個別契約の全部又は一部を解除することができるものとする。
 (略)
3. 前二項による解除は、委託者又は受託者の相手方に対する損害賠償請求権の行使を妨げるものではない。
4. 委託者又は受託者が第2項各号の一に該当する場合、当該当事者は、何らの催告なしに、自己の債務について直ちに期限の利益を喪失するものとする。

次に、②自社の都合(予算や会社の方針変更等)によるイベント開催の中止を可能にしたいと考える場合には、いわゆる中途解約条項を設けておく必要があります。

もっとも、イベント開催は企画、開催準備、広告宣伝など段階的に業務を進行していくものであるため、途中で一方的に契約を打ち切ることが可能とすると、相手方が大きな損失を被るリスクが高まってしまいます。

したがって、契約期間中の中途解約は不可と規定するケースも少なくありません。

とは言え、委託者、受託者いずれの立場であったとしても、何らかの事情により契約継続ができなくなってしまう可能性はあり得ます。

そこで、中途解約時の委託料の支払いのルールを設定したうえで、中途解約を可能とすることが考えられます。
例えば、次のような条項となります。

第X条(契約期間)
1. 本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とし、受託者は当該期間内に本イベントを実施するものとする。ただし、当事者双方が合意の上、本イベントの実施日時を本契約有効期間外に変更した場合、本イベントの実施が完了するまで本契約は有効に存続する。
2. 前項の有効期間中であっても、委託者及び受託者は、2か月前までに相手方に対し書面をもって通知することにより、本契約を中途解約することができるものとする。
3. 前項の中途解約権が行使された場合、委託者は、かかる解約時点までの委託業務の遂行に対する対価について、合理的な根拠をもって算定し、その算定した価額を支払うものとし、それ以外には委託者及び受託者いずれも相手方に対して損害賠償その他名目の如何を問わず一切の支払義務を負わないものとする。

上記条項例は、特に制限なく解約可能とし、解約時点までの委託料も委託者側が算定するとしており、委託者側に比較的有利な規定となっています。

受託者側としては、「やむを得ない事由」がない限り中途解約はできないと定めたり、解約時点までの委託料も双方の合意によって定めるなどと言った条項に修正することが考えられるでしょう。

あるいは、委託料につき分割払いを採用するケースでは、解約時点ですでに支払い済みの委託料をもって精算完了と扱うといった方法をとることも考えられます。

いずれにせよ、この点につき何らの取り決めもせずにプロジェクトを進行してしまうと、いざイベントを中止しなければならない事態に至ってしまったときに、相手方と重大なトラブルに発展してしまう可能性が高まってしまうことになります。

繰り返しますが、イベントの中止は思いもよらない異常事態ではなく、十分に起こり得る事象であり、かつ、想定され得る最悪のリスクの一つでもあります。
したがって、イベント中止に関する解決方針を決定しておくことは当事者双方が安心してイベント運営を進めることに繋がりますので、ぜひ相手方とも事前にしっかりと協議しておくことをお勧めします。

まとめ

以上、イベント運営委託契約書のポイントを解説しました。

イベント運営を第三者に委託するにあたっては、後々のトラブルを防ぐためにも、当事者間で様々な条件を協議の上決定し、その内容を契約書として残しておく必要があります。

この記事がそのような作業を進め、イベントの円滑な運営を行う上で、少しでもヒントになれば幸いです。

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