イベント開催に必要な契約書・規約とそのポイント・ひな型を解説【イベント主催者向け】

こんにちは。ルースター法律事務所 代表弁護士の山本です。

ベンチャー企業では、マーケット拡大や既存顧客の満足度向上などを狙いとして、様々なイベントを開催することが多いと思われます。

例えば、ゲストを呼んで講演会セッションを開催したり、表彰式アワードコンテストコンクールを実施したり、展示会ワークショップ、スポーツやゲームの競技大会など、様々な種類のものがあります。

大規模なイベントになると、参加者に様々なルールを守ってもらったり、イベントの企画運営を業者に委託したり、出演者との権利関係の処理やスポンサーや協賛企業からの要望への対応など、様々な利害関係者との調整が必要となります。

そこで今回は、イベントを主催するにあたって必要となる契約書はどのようなものか、それぞれの契約書でどのようなポイントに注意すればよいかを解説していきたいと思います。

なお、主にオフラインイベントを想定していますが、オンラインイベントや、Youtubeチャンネル等における企業案件の一環としてイベントを開催する場合などにも応用できると思います。

イベント主催を考えているが、契約書をどのように作成したらよいかわからないという方はぜひ最後までご覧ください。

イベント開催にかかわる利害関係者の整理

どのような契約書が必要となるかを整理するうえでは、まずは当事者や利害関係者が誰なのかを整理することから始めるのが効果的です。

一般的に、イベントを主催するうえで関わることとなる関係者としては以下が想定されます。

  1. イベント運営会社
  2. スポンサー、協賛企業、出展企業等
  3. 登壇者、ゲスト、出演者等
  4. 一般参加者

以下、それぞれの関係者ごとに、必要となる契約書や規約とそのポイントを見ていきましょう。

各当事者との契約におけるポイント・条項例

イベント運営会社

イベント企画や運営を業者に依頼する場合、イベント運営会社との間で「業務委託契約書」を締結することになります。

業務委託契約書においては、依頼する業務の内容、範囲がどこまでなのかを明確にしておくことがとにかく重要です。

企画や立案段階から関与を委託するのか、それとも当日の設営や運営のみを委託するのかによっても委託内容は違ってきます。
また、スポンサーの募集などの代理店業務や一般参加者の集客業務を委託したり、著名人やインフルエンサー等を起用する場合はそのキャスティング等を委託する場合もあり、それによって責任の範囲や委託料の設定も変わってきます。

このように、どこまでの業務が委託の対象となるのか、運営会社の責任はどこまでかを明確にしたうえで、委託料を設定することが重要です。

また、会場代や広告宣伝費、イベント当日の備品代や撮影費、タレント等への出演費など、委託料以外の費用の負担も明確にしておかないと後々のトラブルの原因になりかねません。

以下の条項例を参考に、しっかりと契約書を作成して締結しておきましょう。

第X条(業務委託)
甲は、甲が主催する本イベントにおいて、本イベントの遂行に係る下記の業務(以下「本業務」という。)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
(1) 本イベントの企画の検討及び提案
(2) 本イベントの広報・PRの企画及び実行
(3) 本イベントの会場の手配、開催日準備、運営進行、開催後の撤収等本イベントの運営に関する業務
(4) その他前各号に附帯関連する業務

第X条(個別契約)
本業務の詳細は個別契約において決定するものとし、個別契約は、発注年月日、委託業務の件名、委託業務の内容、履行期・納期、納入方法等の必要事項を記載した注文書(電磁的方法を含む。書式の詳細は双方が協議の上決定する。以下同じ。)により発注し、受託者がこれを承諾することによって成立する。

第X条(委託料)
甲は、乙に対し、委託料として●●●円を支払うものとする。なお、委託料には、会場費、備品代、人件費、撮影費その他本イベントに係る諸経費が含まれるものとする。

  • イベント運営会社と締結する「イベント運営委託契約書」については、こちらの記事でより詳細に解説しています。
    イベント運営委託契約書について詳しく知りたいという方はぜひご覧ください。

スポンサー、協賛企業、出展企業等

イベント開催に当たって、企業の広告宣伝等に協力する代わりに、対価としてスポンサー料協賛金を提供してもらう場合も多いと思います。
あるいは、展示会や企業説明会等では、企業にブース出展させ、その対価として出展料を提供してもらうケースもあります。

スポンサーや出展企業からの収入がメインのマネタイズポイントになることも多く、当然契約書の重要度も高いと言えます。

しかしながら、契約書を準備しないままスポンサー等と話を進めてしまうケースをしばしば目にします。

結果、スポンサーからの無理難題や過剰な要求に頭を悩ませたり、出展企業が不適切な商材を販売したりなどのトラブルに発展することがあります。

このような事態を防ぐために、スポンサーや出展企業等との契約書もきちんと作成しておく必要があります。

スポンサーとの契約は、「申込書」「スポンサー規約(または出展規約)」「スポンサーメリット一覧表(または出展条件一覧表)」の3点セットにより締結するのがお勧めの方法です。

スポンサーに対しては、スポンサー料の見返りとして、広告宣伝への協力、HP等への掲載、イベントへの登壇、招待券などの権利(スポンサーメリット)を付与するのが一般的です。
スポンサー料に応じてランクを設定し、ランクごとにスポンサーメリットの内容を変えることも非常に多く見られます。

こういったスポンサーメリットをランクごとに一覧表としてまとめ、申込書においてランクを選択してもらう方式をとれば、スポンサーとの契約を効率よく締結することができます。

あわせて、スポンサー企業に一般的に守ってもらいたいルールをスポンサー規約にまとめておき、申込時に同意をもらっておくと安心です。

スポンサー規約の内容としては以下のような条項例が考えられますが、実際に作成する際にはぜひ専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

第X条(協賛金)
協賛企業は、主催者に対し、本イベントの協賛金として、別途申込書により協賛企業が選択した協賛金を支払う。

第X条(スポンサーメリット)
主催者は、協賛企業に対して、別途申込書により協賛企業が選択したランクに応じて、別紙スポンサーメリット一覧表に定める権利を付与する。

第X条(禁止行為)
協賛企業は、以下の各号に定める行為を行ってはならない。
(1) 主催者の事前の承諾なく、主催者又は本イベントに関連する商標、ロゴ、肖像等を本契約に基づき許諾された目的、範囲を超えて利用する行為
(2) 主催者、他の協賛企業その他本イベントに関わる一切の関係者を誹謗中傷もしくは侮辱する行為
(3) ……

登壇者、出演者等

イベント当日、著名人やインフルエンサー等に出演を依頼するケースもよく見られます。

出演・拘束時間、出演料、交通費や宿泊費等の経費の負担などの基本条件のほか、イベントの宣伝等にどこまで肖像や名称を利用してよいか、イベントを撮影した動画や写真等をSNSなどで公開してよいかなど、出演者の権利関係の調整が必要となります。

この点については、キャスティングを代理店等に依頼している場合も多いと思われます。

その場合、出演者との出演条件等の交渉は代理店を通じて行ってもらうことになると思います。

いずれにせよ、最終的に決定した条件を明記した「出演契約書」を締結し、経費の負担やコンテンツの利用等につき双方の認識に齟齬がないようにしておくことが重要です。

出演契約書を作成する場合は、以下の条項例を参考にしてみてください。

第X条(出演承諾)
事務所は、主催者が運営する下記イベントに、事務所に所属する【出演者名称】を出演させることを承諾する。
(1) 出演会場:
(2) イベント名:
(3) 開催日時:
(4) イベント概要:

第X条(利用許諾)
1.事務所は、主催者が本イベントを録音・録画すること及び写真撮影を行うことを許諾する。
2.主催者は、別紙に定める使用範囲及び使用条件を遵守することを条件として、本イベントの動画及び写真を利用することができる。

一般参加者

一般参加者についても、キャンセル・返金の取扱い、会場での撮影の可否やSNS投稿に関するルールなどを定める必要があります。

イベント参加規約を作成し、フォームや参加料決済時に規約に同意してもらうことが有効です。

なお、イベント一般参加者に対して後日メール等で自社サービスの広告宣伝や情報提供を予定している場合、明確な同意を得ておくことが必要となります(オプトイン規制)。
しかも、規約にこっそり書いておくだけでは不十分で、「広告メールの配信を希望する・希望しない」といった内容のチェックボックスを設けるなどの分かりやすい方法によらなければならないとされています(特定電子メール法及び同法ガイドライン)。

したがって、イベント参加規約のほか、イベント参加申し込みフォームを整備することも必要となってきます。

【参加申込時に承諾を得ておくべき事項の例】
・ご提供頂いた参加者様に関する個人情報は、当社プライバシーポリシー(http:~~)に定める目的により使用・管理させていただきます。
・参加者様による会場での撮影、SNS投稿については、会場内の指示に従っていただきます。
・本イベントへの参加を原因として参加者に生じた損害、第三者とのトラブル等につき、主催者の責めに帰すべき事由によるものを除き主催者は責任を負いかねます。

まとめ

以上、イベントを主催するにあたって必要となる契約書はどのようなものか、それぞれの契約書でどのようなポイントに注意すればよいかを解説しました。

必要な契約書・規約が多く、作成するのが大変だと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、一度専門家のアドバイスや指導の下、しっかりした内容の契約書・規約を作成し、申込のフロー等をきちんと整理しておけば、別のイベントを主催する際に流用することも可能です。

円滑なイベント運営のために有効な投資になると思いますので、イベント運営に関する契約書関係でお悩みの方はぜひ一度ご相談をお待ちしております。

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