ネットで誹謗中傷されたらどうする?~①誹謗中傷記事を削除するには~
特に、BtoCの事業を展開されている方にとって、インターネットは欠かせないツールの一つですね。
例えば、お客様の「クチコミ」などは、消費者にとってみれば、商品・事業者を選ぶうえで貴重な情報源になりますし、事業者としても、まっとうな意見であれば、サービスの向上に役に立つということもあるのではないでしょうか。
しかし、中には、まったくのデタラメや、根拠の薄い決めつけをもとに、ネガティブな内容を書く人もいるものです。
このようなネット上の誹謗中傷に対しては、大きく分けて、
①誹謗中傷記事を削除してもらう
②誹謗中傷を書き込んだ人を特定し、損害賠償(慰謝料)を求める
の2つの対抗策が考えられます。
今回は、①の誹謗中傷記事を削除してもらう方法について、具体的に見ていきましょう。
まず考えないといけない事 ~「名誉毀損」とは?~
削除を求めるにしても、損害賠償を求めるにしても、その「法的な根拠」があるかをまず検討しなければなりません。
事業者への誹謗中傷では、多くの場合は、「名誉毀損」に該当するかを検討することになります。
最高裁の判例によれば、「名誉」とは、人や会社の品性、徳行、名声、信用等について「社会から受ける客観的評価」であり、「名誉毀損」とは、この「社会的な評価」を低下させる行為である、と定義されています。
何やらわけのわからない内容を書いてしまいましたので、具体的な事例を挙げてご説明します。
事業者に対する書き込みの例を挙げれば、
・歯科医師が「デタラメな治療を行った」という内容を書き並べた上、「ハカイシャハイシャ」 だ、などと書き込んだ事例(東京地裁H19.9.27判決)、
・結婚相談所が「口コミを自作自演している」とか、「無視、放置、誇大広告が得意な結婚相談所です。」などと書き込んだ事例(東京地裁H29.10.26判決)
では、このような内容の書き込みは事業者の信用をおとしめるものであるとして、「名誉毀損」に当たると認められています。
あるいは、「社長が犯罪を犯した」とか、「会社内でパワハラが横行している」など、個人・会社の品性や信用等をおとしめるような内容の書き込みであれば、「名誉毀損」に当たる可能性があります。
名誉毀損にならないケース
ただし、会社の信用等を貶めるような書き込みであっても、「名誉毀損」にはならないケースもあります。
例として、「真実性の抗弁」などと呼ばれる考え方があります。
最高裁の判例では、「公共の具体的な利害に関係があることを事実を以って摘示するもので、その目的が専ら公益を図ることにあり、摘示した事実が真実または真実であると信ずるについて相当な理由のあるときは名誉毀損は成立しない」とされています。
難しい言葉なので誤解を恐れずに言い換えますと、「みんなのために役立てようという目的で、本当のことを書いているのであれば、名誉毀損にはなりません。」というような考え方です。
事業者への書き込みの例で言えば、
・口コミサイトにおける、「勧誘がしつこい」、「不快感しか残りません」などの書き込みに対し、事業者のサービス等について他の消費者に有益な情報を提供するという目的の書き込みであり、かつ、真実である可能性が高いなどとして、名誉毀損には当たらないとしたケース(東京地裁H28.9.21判決)
などがあります。
この他にも、評判を低下させる内容であっても「名誉毀損」が成立しないとする考え方がいくつかありますので、「名誉毀損」に当たるか否かを判断するには、専門的な知識が必要となります。
まとめると、誹謗中傷をネットに書かれた事業者としては、「名誉毀損」が成立するかどうか?を検討するのがよいと思います。
この点の判断は専門的な知識を要するので、具体的なアクションを起こす前には、専門家である弁護士に相談して意見をもらっておくのがベストです。
誹謗中傷を削除してもらう方法
では、会社を中傷する書き込みが「名誉毀損」に当たると考えた場合、その書き込みを削除してもらう方法についてです。
書いた人がわかればその人に言えばよさそうですが、ネットへの書き込みは多くが匿名ですから、誰がしたものかもわからないという場合がほとんどと思われます。
こんなとき、泣き寝入りするしかないかというと、そんなことはありません。
書き込みがされているサイトの管理者に削除を依頼すればよいのです。
例えば、「ヤフー知恵袋」への書き込みであれば、ヤフー社に削除を依頼すればいいわけです。
「そんなの対応してくれるの?」と思われるかもしれませんが、書き込みが「名誉毀損」に当たることをきちんと説得的に伝えれば、意外と対応してくれます。
「送信防止措置依頼」とは
削除依頼の具体的な方法ですが、まずは、サイトの「通報」「削除依頼」フォームなどを利用して削除を求めることが一般的です。
悪質な書き込みであれば、この方法によってサイト運営者に書き込みを削除してもらえることも多いです。
ただ、この方法では対応してくれないという場合には、次のステップを踏まなければなりません。
裁判を起こすという方法もありますが、運営者に、「送信防止措置依頼書」という書類を送って対応を求めるという方法があります。
サイトに中傷を書き込まれた者には、「プロバイダ責任制限法」という法律により、サイト運営者等に「送信防止措置」(書き込みの削除のことだと考えてください)を請求する権利が認められています。
この法律に基づいて、運営者に誹謗中傷記事の削除を求めるという方法です。
裁判よりもはるかに短期間で削除を実現できる可能性がありますし、費用も低額なので、この方法をとることも検討するとよいでしょう。
ただし、書き込みが名誉毀損に該当すること、上記の「真実性の抗弁」などが認められないことを詳細に記載する必要があるので、「送信防止措置依頼」を行うのであれば、書類の作成は弁護士に依頼した方がよいと思います。
それでも応じなければ、サイト運営者に対し、書き込みの削除をするように求める裁判を起こすことも可能です。
但し、やはり専門的な知識が必要となるので、弁護士への依頼をすることが必要と思われます。
判決のとき
平成31年7月26日、法廷にて、判決が言い渡されました。
結果は、無事Xさんの主張が認められ、Xさんの勝訴(請求認容)となりました。
ちなみに判決の言い渡しは、「主文(しゅぶん)」と言って、Xさんの請求を認めるかどうかという結論だけ読み上げて、それでおしまいです。
どういう理由で請求を認めたか、認めなかったかというのは、判決書の中に詳しく書かれており、これを読んでみないとわかりません。
書面で始まり書面で終わる、って感じですね。
ともあれ、Xさんとしては、これで、とりあえずは一安心です。
まとめ
事業者・会社への誹謗中傷がネットに記載された場合、「名誉毀損」に当たることを説得的に説明することができれば、記事の削除を求めることが可能です。
このようなお悩みをお持ちの方は、「名誉毀損」に当たるかの判断も含めて助言をすることが可能ですので、まずはご相談ください。
次回は、誹謗中傷に対して「損害賠償」を求めるにはどうすればよいかをご紹介します。
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