【起業家・経営者向け】顧客・取引先から代金が支払われないときはどうする?

「〇月△日までに代金を支払ってもらえるはずだったのに、期日になっても入金がなかった。。。」

事業者の方であれば、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。

今回は、取引先・顧客などから約束したはずの入金がなかったときの対処法と、
このような事態に陥らないための予防策についてお教えします。

よろしくお願いいたします。

まずは、相手方に連絡を。

単なる支払漏れや、支払期日を勘違いしていたというケースもないわけではありません。

まずは、相手方に連絡を取り、支払が確認できないことを伝えてみましょう。

逆に言えば、ここで連絡がつかなかったり、妙な言い訳をし始めたりしたら、要注意です。

待てども待てども入金がなく、時間だけが過ぎていく。。。

といった事態になりかねませんので、次の対策を考えましょう。

内容証明郵便で催促

電話・メールなどの催促では相手方が動かない場合は、書面(郵便)によって催促を行いましょう。
普通郵便や簡易書留などでも構わないのですが、
催促のときは、「内容証明郵便」を用いるのがお勧めです。

その理由としては、

①相手方に与えるインパクトが大きい。
普段、内容証明郵便なんて使わないし、そうそう届くこともないですよね。
したがって、「内容証明郵便が届いた」というだけでも、相手方にはそれなりのインパクトがあります。

さらに、内容証明郵便の作成・送付を弁護士に依頼して、
「〇〇日以内に支払がない場合、然るべき法的措置を取ります。」
というような文言を入れておけば、こちらの強い意志が相手に伝わりますので、より効果的です。

②書面の内容・相手方に配達された事実を証明できる。
場合によっては、こちらの効果を重視するときもあります。
例えば、契約書で「催促して〇〇日以内に支払がなければ契約を解除できる」といった条項がある場合には、
内容証明郵便を発送することにより、「催促」をした事実を証明することができます。

また、契約書などが全く残っていない場合にも、
こちらの認識を書面で残しておいたり、相手方がこちらの主張を認めるとの回答が得られたりすれば、
それが有力な証拠となり、裁判で争う場合に役に立ってくることがあります。

※内容証明郵便の注意点

ただし、書面の内容が証拠として残ると言うことは、必ずしもいい事ばかりではありません。
もし、自身が不利になるようなことを書いてしまったら、後日裁判などになった場合、相手方は徹底的にそこを突いてきます。

なので、内容証明郵便には、「必要かつ十分」に当方の主張を書くことが重要です。
ついつい色々書きたくなってしまうかもしれませんが、

「過ぎたるは及ばざるが如し」ということです。

したがって、内容証明郵便による催促をお考えの方は、弁護士に相談して、
「必要かつ十分」な書面を作成することをお勧めします。

裁判を利用して回収

内容証明郵便を送って、相手方から無事に支払をしてもらえたり、
交渉の結果、分割で支払っていくなどの合意(約束)を取り付けることができれば、無事に完了となります。

しかしながら、


「内容証明郵便を送っても一向に反応がない」
「相手方がこちらの主張を争う態度を見せており、交渉がまとまりそうにない」

あるいは、
「分割で支払うと約束したのに、それも反故にされてしまった」

こういった場合には、裁判(民事訴訟)を起こして回収を図ることになります。

なぜ民事訴訟が必要なのかと言うと、以下の3点が大きな理由です。

①「合法的に回収する」ため
特に、相手方から反応がなかった場合ですが、
相手が代金を支払ってくれないからと言って、相手のところに乗り込み、無理やり財産を持っていくようなことはできません。
こんなことをしてしまうと、自身が「窃盗罪」などの罪に問われることになりかねません。
これを、専門用語では「自力救済の禁止」と言います。

(極端な例ですが、自分が盗まれた物でさえも、盗んだ相手から無理やり取り返すことは犯罪になります。)

したがって、いくら相手方に非があっても、合法的に権利を実現するためには、
裁判所の「お墨付き」(判決など)をもらって、
裁判所を通して相手方の財産を「差し押さえる」(強制執行)というプロセスを踏まなければなりません。

②「決着を付ける」ため
特に、相手方がこちらの言い分を争っているような場合、当事者同士の交渉ではまとまらないこともよくあります。

落としどころが見いだせない場合には、訴訟を提起して、お互いの言い分とそれを裏付ける証拠を出し合って、
裁判官に裁いてもらわなければ、いつまで経っても話が前に進みません。

このように、双方の主張に隔たりがある場合にも、訴訟を起こすことが必要になってくると言えます。

③「時効」との関係
相手方から〇〇円を支払ってもらうという権利(法律用語では「債権」と言います。)は、
権利を行使せずに放置していると、「時効」により消滅してしまう、というのはご存じの方も多いのではないでしょうか。
また、時効は原則10年だとか、事業者の債権であれば5年だとかいうことも、聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

間違いではないですが、実は、債権の種類によっては、これよりも更に短い期間で消滅するものもあります。
例えば、商品の代金や学習塾の授業料などは、2年で時効により消滅してしまいます(民法173条1号、3号)。

相手から支払いがないからと言って手をこまねいていると、時効により請求ができなくなることすらあり得ます。

このような事態を防止するには、時効が完成して権利が消滅してしまう前に、訴訟を提起しなければなりません。

予防策はないか?

相手方が支払いをしない場合、例えどんなに相手に非があろうと、
最終的には裁判を利用して回収するしかありません。

しかし、残念ながら、裁判というのは、お金も時間も非常にかかってしまいます。

特に、お金を払ってもらえる権利があることを証明する証拠(契約書など)が残っていない場合には、
裁判ではかなり苦戦することになります。

勝っても相当な期間を要したり(民事訴訟は、1年単位で時間がかかることも珍しくありません)、
うまく証明することができなければ、最悪敗訴して泣き寝入りせざるを得ない事すらあります。

したがって、

「私(当社)は貴方(貴社)にお金を払ってもらう権利がありますよ」

ということを、

「事前に書面で残しておく(=契約書を作っておく)」ことが非常に重要です。
 

書面で残しておくだけで、相手が白を切ることはしにくくなります。

契約書を作る時に注意したいこと

しかし、ただ書面で残すだけでは、必ずしも十分ではありません。

相手方が支払いを拒む場合というのは、大抵何らかの根拠を示して争ってきます。

例えば、
「商品・サービスが聞いていた内容と違うから、代金は支払わない。契約は白紙にする。」
と言った具合です。

このような場合に備えて、
どのような商品・サービスを、どのような内容(品質)で提供するのか、
あるいは、どういう場合に当方の責任とするのか、などという点を定めておくことが重要です。

また、相手が支払いをしない場合はどうなるか(例えば「違約金」を定めておくなど)
を契約書に盛り込んでおくことも効果的です。

このほかにも、契約書を作る際には、考えるべきことはたくさんあります。
(例えば、BtoCであれば、消費者契約法や特定商取引法などに配慮しないと、契約が無効になることもありえます。)

逆に、相手が契約書のひな型を提示してきた場合には、上記の点を含め、契約書の内容をチェックしていくことが必要になります。

最後に

相手が支払いをしない場合、最終的には裁判を利用するしかないこと、
裁判には時間も費用も掛かってしまうため、事前に契約書を巻いておくことが重要であり、
その中でも、将来のトラブルを予想し、効果的な条項を入れておくことが大切であること

をお伝えしてきました。

この点、弁護士は、紛争になった契約といつもにらめっこしていますので、
どのような条項が紛争の種になるか、どういう文言を入れておけば効果的か、

という事例を集積しています。

今の時代、ネットで「〇〇契約」とでも検索すれば、契約書のひな型は出てきますし、
相手方が契約書を準備してくることもあります。

しかし、契約書には、「定型」はあっても、「定石」はありません。
相手方の属性・業界、商品・サービスの内容、取引のフローなど、
契約書で何を重視すべきかは、個々の取引によって異なります。

したがって、新しい取引先と契約するときや、大きな金額が動く取引などは、
是非、様々な契約トラブルを集積している弁護士にご相談ください。

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