「人材紹介契約書」のポイントとひな型を解説【2025年最新版・人材紹介会社向け】

こんにちは。ルースター法律事務所 代表弁護士の山本です。

今回は、「人材紹介契約書」のポイントを解説していきたいと思います。

これから人材紹介免許を取得してビジネスを立ち上げるスタートアップや、営業担当者に契約書チェックを任せている中小の人材紹介会社の方など、人材紹介業の契約業務に関わる方はぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

人材紹介契約書とは?

この記事では、人材紹介契約書=求人企業(クライアント)への人材紹介・あっせんを目的とする取引に関する契約書であって、人材紹介に関する基本的な事項を求人企業との間で定めることを目的として締結する契約書を想定しています。

具体的には、紹介手数料の決め方や早期退職時の返金規定などが書いてある契約書のことです。

「職業紹介契約書」「採用コンサルティング契約書」など、別のタイトルが用いられることもありますが、内容が大きく変わるわけではありません。
ここでは、呼び方を「人材紹介契約書」に統一して、ポイントを解説していきます。

人材紹介契約書のポイント

人材紹介契約書を締結するうえで特に注意しておきたいポイントは、大きく分けて次の3点です。

  1. 紹介料に関する条件(返金規定含む)が正しく記載されているか?
  2. 自社がどこまで責任を負うか(あるいは負わないか)が明記されているか?
  3. クライアント側の禁止事項・注意事項を不足なく規定できているか

以下、それぞれにつき詳しく解説していきます。

なお、契約期間、解除、損害賠償、個人情報保護、秘密保持など、他の契約書とも共通する事項についての解説は割愛し、人材紹介契約書において特に注意すべきポイントとしてまとめていますので、その点はご留意ください。

紹介料・返金規定の定め方

紹介料及び返金規定の取り決めは、人材紹介ビジネスの収益を守る最重要部分です。

契約書の不備により、紹介料を回収できなくなったり、想定外のケースでの返金を余儀なくされる例も少なくありません。
以下の観点を必ず確認しましょう。

① 紹介料の金額・算定方法

紹介料は、定額制(人材1名につき●円というような定め方)か、変動制(人材の理論年収の●%というような定め方)のいずれかが採用されることがほとんどです。

いずれの場合も、商談で合意した条件が正しく契約書に反映されているかをきちんと確認しておくことが非常に重要です。

一見当たり前のことのように思えますが、この確認を怠ってしまい、紹介料を損してしまったというケースが少なくありません。
例えば、正社員採用を前提に商談を進めていたところ、契約書に「有期雇用の場合は紹介料を●円とする」といった条項が盛り込まれており、それを見落として契約を締結してしまうケースです。
後々、クライアントから「選考の結果有期雇用での採用となったので、紹介料は●円です」と主張されてしまうことになります。契約書に明記されている以上、やむを得ません。

特に、起業間もない中小・ベンチャーの人材紹介業者は、クライアント側が提示した契約書を十分確認せず、知らないうちに不利な条件を受け入れている例が珍しくありません。

あとあと後悔しないように、締結前にしっかりと契約条件をチェックしましょう。

② 紹介料の発生時点

人材採用は一般的に、企業による採用決定(内定)通知⇒求職者による内定承諾入社(出社)、という流れで進みます。
このうち、どのタイミングで紹介料が発生するのかが明確に定まっていない契約書を目にする機会が結構あります。
また、内定承諾により紹介料が発生すると規定されているものの、後述の返金規定で内定辞退や内定取消に関する取扱いが明記されていないケースもしばしば見受けられます。

このような場合、「内定承諾により雇用契約は成立したが、実際には出社しなかった」というケースで、紹介料が発生するのかどうかが不明確となり、トラブルに発展してしまうことがあります。

したがって、どのタイミングで紹介料が発生するかを明確に定めておくことが重要です。
加えて、様々なケースで紹介料が発生するか否かが明確に定まるよう、後述の「返金規定」との整合性も確認する必要があります。

この点、人材紹介業者側としては、早期に紹介料を回収できた方がキャッシュフローの安定に繋がります。
特に新卒人材紹介の場合、内定承諾から実際の入社まで半年間、場合によっては1年以上空くこともありますので、基本的にはなるべく早めのタイミングで紹介料が発生すると定める方が有利と言えます。したがって、「内定承諾」を紹介料の発生条件と定めることが多いと思われます。

この点はクライアントからの要望等によっても変わってきます。

いずれにせよ、やはり事前に取り決めた内容が正しく契約書に反映されているかをしっかりとチェックしておくことが重要です。

③ オーナーシップ条項、重複応募・重複紹介の処理

一般的に、紹介手数料は、人材紹介会社からの紹介に基づいて求職者の採用・入社に至った場合に成立します。

しかし、「紹介に基づいた採用」と言えるのかが微妙なケースもあります。

代表的な例として、次のようなケースが挙げられます。

  • 紹介直後の選考時には不採用となったものの、その後しばらく経ってから再度選考が行われ、採用が決まったケース
  • 紹介を行った求職者が、別のルート(求人サイトなど)で同一の企業に応募していたケース
  • 求職者が複数の人材紹介会社を利用しており、同一企業への紹介が重複してしまったケース

このようなケースでは、「紹介に基づいた採用」と言えるのか、「どの人材紹介業者の紹介が優先するのか」などが不明確となり、トラブルに発展してしまう可能性があります。

そこで、契約書には、

・「紹介後●年以内に採用を行った場合は人材紹介の成立とみなす」と言った条項(いわゆる「オーナーシップ条項」)
・重複応募・紹介があった場合の優先順位や処理方法に関する条項

を明記しておくことが効果的です。

具体的な条項例は、後ほどご紹介します。

④ 返金規定

既に何度か登場していますが、人材紹介契約書では、内定承諾後の内定辞退や入社後の早期退職などが発生した場合、紹介料を一定の割合で減額(返金)するという条件(いわゆる「返金規定」)が設定されることが一般的です。

人材紹介ビジネスの収益に大きな影響のある条項であり、想定外の返金などが発生しないよう、慎重に条項を設定する必要があります。

人材紹介会社側からすれば、基本的には返金の原因となる事由をなるべく限定することが重要です。
例えば「●ヶ月以内に退職した場合」だけだと、クライアント側に非がある退職(パワハラや雇用条件と異なる労働をさせた)の場合も返金対象に含まれることになってしまいます。
したがって、「自己都合により退職した場合に限る」や「雇用主の責めに帰すべき事由による退職を除く」等、返金の対象となるケースを限定する方針で返金規定を設定することが望ましいと言えるでしょう。

具体的な条項例は後ほどご紹介しますが、返金規定は特に相手方(クライアント側)からの修正、追記等の要望が多い規定です。

都度、要求された返金規定が受け入れ可能か、抜け漏れや交渉により決定した内容と契約条項との相違がないか等を慎重に確認する必要があります。

紹介手数料・返金規定の条項例

第X条 (紹介手数料)
1. 委託者が、紹介者から紹介された候補者の採用を決定し、当該候補者が内定承諾書を委託者に提出した場合(以下、当該候補者を「採用決定者」という。)に本契約に基づく人材紹介が成立するものとし、紹介者は委託者に対し、以下の定めにより算定される紹介手数料を請求できるものとする。
・紹介手数料は、以下各号の計算式により算出した理論年収の●●%とする。ただし、別途消費税を加算するものとする。
(1) 月額固定給×●●ヶ月+前年度実績賞与額+その他諸手当
(2) 「その他諸手当」には、役職手当・調整給・特別手当・資格給・家族手当・住宅手当を含むが、これらに限られない。
(3) 「月額固定給×●●ヶ月」については、年俸制の場合は、年俸額を適用する。
(4) 前各号により算出した紹介手数料額が●●円未満の場合は、●●円を成功紹介手数料とする。
2. 委託者は、採用決定者の内定承諾書の提出日が属する月の翌月末日までに、前項に定める紹介手数料全額を、紹介者の指定する銀行口座へ振込む方法により支払うものとする。なお、振込手数料は委託者の負担とする。

第X条(オーナーシップ)
1. 紹介者が候補者を紹介した後に、当該候補者について他の手段により応募があった場合には、委託者は紹介者の紹介による応募を優先して取り扱うものとする。
2. 紹介者が紹介した応募者について、既に他の手段により応募があった場合には、委託者は紹介日から●営業日以内にその旨を紹介者に通知するものとする。委託者から当該期間内に当該通知がなされた場合に限り、当該候補者については紹介手数料の発生対象外とする。
3. 紹介者が候補者を紹介した日から1年間以内に委託者が当該候補者を採用した場合、紹介者は、当該候補者が本契約に基づいて採用されたものとみなし、紹介手数料を請求することができる。

第X条(紹介手数料の返金)
1. 採用決定者が委託者への入社前に内定を辞退した場合は、その辞退の原因が委託者の帰責事由による場合を除き、紹介者は当該採用決定者に係る紹介手数料を請求する権利を失い、すでに受領している場合は、委託者に対してその全額を返還するものとする。
2. 採用決定者が以下の各号に該当することを理由に委託者が内定を取消し、または不採用とした場合も、前項と同様とする。
(1) 当該候補者が卒業を予定している年度に卒業できなかったとき
(2) 採用にあたり提出した書類に虚偽があったとき
(3) 病気や事故により委託者における就労に耐えられないことが判明したとき
(4) 刑事事件で有罪の判決又は刑事訴追を受けたとき
3. 採用決定者の入社後、次に定める期間内に、自己都合または明らかに採用決定者の責めに帰すべき事由による解雇により早期退職した場合、紹介者は委託者の求めにより、紹介手数料の一部を下記各号の割合で返還する。ただし、当該退職が委託者の責に帰すべき事由に起因する場合はこの限りではない
(1) 入社日から 1 ヶ月未満に退職した場合、紹介手数料の●●%
(2) 入社日から 1 ヶ月以上 3 ヶ月未満に退職した場合、紹介手数料の●●%
4. 委託者が本条に基づく紹介手数料の返還を請求する場合、各項に定める事由が生じた日から●●営業日以内に当該事実を紹介者に通知するものとする。紹介者は当該事実を確認した上で、委託者が支払うべき紹介手数料から各項の規定に従い算定した額を控除し、または、各項の規定に従い算定した額を、委託者から返還請求があった日の翌月末日までに委託者に返還するものとする。なお、返還する際の振込手数料は紹介者の負担とする。
5. 委託者から前項に定める請求があった場合、紹介者は委託者に対し、本条各項所定の事由の該当の有無を確認できる資料または情報の提供を求めることができるものとし、委託者がこれに応じない場合、紹介者は本条各項に定める紹介手数料の返還等を行う義務を負わないものとする。

  • 「紹介手数料」条項では、前記の通り「内定承諾」を紹介料の発生条件と明記したうえで、変動制(理論年収の●%)を採用する場合の条項例を記載しています。
  • 「オーナーシップ条項」では、紹介後に同一の求職者から他ルートでの応募があった場合は本契約による紹介が優先する(紹介手数料が発生する)、紹介前にすでに他ルートでの応募が先行していた場合はそれを通知した場合に限り紹介手数料の発生対象外とする、紹介後1年以内に採用した場合は本契約による採用とみなす、と規定しています。おそらく、これがオーソドックスな規定であると思われます。
  • 「返金規定」では、自己都合による内定辞退・退職/明らかに採用決定者の責めによる解雇の場合のみ返金するという形で返金対象を限定することを意図しています。また、第5項でこれらの事由を証明する書類等の提出を義務付けることで、返金事由の該当性をきちんと確認したうえで返金の要否を判断できるようにしています。

免責条項の定め方

紹介した人材が内定辞退や早期退職をしてしまった場合のほか、資質や能力の点で問題があった場合、会社でトラブルを起こしてしまった場合などには、「適切な人材紹介やサポートを実施しなかった紹介会社の責任である」などとしてクレームに発展してしまうケースがあります。
中には、このようなトラブルを理由に紹介料の減額や免除を求められたり、損害賠償を要求されることもあります。

このような場合に、過剰に責任を負わされてしまうことを防いだり、相手企業との交渉を有利に進めるためには、人材紹介契約書で「自社がどこまで責任を負うか、あるいは負わないか」を明確にしておくことが重要です。

以下、定めておくといざという時に役立つ条項を3つご紹介します。

① 応募書類の免責/資質や能力の非保証
履歴書その他の応募書類は応募者の責任において作成されるものであり、紹介者は責任を負わない」、「紹介者は、応募者の資質、能力など応募者に関する保証は行わない」といった条項です。
人材紹介では、紹介会社にできるのはあくまでも紹介までであり、資質や適性等の最終判断は相手企業が行うことが前提となります。このような前提を契約上も明確にしておくことにより、後日応募者の適性などを巡ってクレーム等に発展することを防止するのに役立ちます。

② 採用過程に責任・義務を負わないこと
内定辞退や早期退職があった際、「紹介した人材へのアフターフォローが不十分だったのではないか」などのクレームが寄せられるケースがあります。
このようなクレームを防ぐためには、「紹介者は応募者の選考、採用及び採用後のフォロー等について義務を負わない」といった条項を入れておくと効果的です。

③ 相手方企業と応募者との間のトラブルについて責任を負わないこと
読んで字のごとく、「相手方と応募者その他の第三者との間の紛争については一切の責任を負わない」という条項です。
このような条項を入れておくことにより、紹介した人材が先方企業でトラブルを起こしてしまったときなどに、クレームに発展してしまうことを防ぐのに役立ちます。

免責条項例

第X条(免責)
1. 候補者の履歴書、職務経歴書その他の応募書類は当該候補者の責任において作成されるものであり、これらの書類に虚偽や不備があっても、紹介者は何らの責任を負わない。また、紹介者は、候補者の資質、能力及び応募書類の正確性等、候補者に関する保証は行わないものとする。
2. 紹介者は、委託者が候補者を選考するにあたって必要と認められる限度において候補者の個人情報を委託者に対して開示・提供するものとし、候補者の病歴、思想・信条等の機微情報及び併願状況などの求人条件に何ら関連のない個人情報については、原則としてこれらを取得せず、かつ、候補者の個別の承諾を得ない限り、委託者に対して開示・提供する義務を負わない。
3. 委託者は、自らの責任で書類審査、面接、試験等の適宜の方法で選考を行った上、適当と認めた場合には、自らの責任で当該候補者と雇用契約を締結するものであり、紹介者は、選考、採用及び採用後のフォロー等を行う義務を負うものではない。
4. 紹介者は、委託者と候補者(採用決定者も含む。)その他の第三者との間のトラブルについては一切責任を負わないものとする。

  • 第1項に関連して、裁判例でも、候補者の前職の退職理由に関する説明内容について「人材紹介業者には候補者の説明内容についての裏付調査まで行う義務はないものと解するのが相当である」と明示するものがあります(東京地裁平成23年3月15日判決、ウエストロー・ジャパン2011WLJPCA03158022)。
  • 第2項について、厚生労働省が定める「公正な採用選考をめざして」が参考になります。

禁止事項の定め方

紹介手数料・返金条項の解説の部分でも少し触れましたが、相手方企業の中には、様々な方法により紹介料の支払いを免れようとする企業がいることも事実です。

紹介直後の選考では「不採用」扱いとしておき、後日再度選考を行って直接採用を行うケース、退職日や退職理由を偽装して返金規定の適用を主張するケースなどは、その典型例です。

また、紹介された候補者の情報を、採用以外の目的で利用するケースもしばしば見受けられます。

例えば、紹介された候補者を自社では不採用としつつ、他社にその候補者の情報を提供することで利益を得ようとするケースです。特に、人材紹介業や人材派遣業など、人材ビジネスを運営する企業をクライアントとして人材紹介を行う場合には、特に留意しておく必要があります。

こういった不正行為に適切に対応するためには、クライアント企業側の禁止事項を適切に規定しておく必要があります。

具体的には、「直接連絡・採用の禁止」、「紹介料を不当に免れる行為の禁止」、「目的外利用の禁止」と、これらに対する「違約金条項」を入れておくことが非常に効果的です。

① 直接連絡・採用の禁止
後日再度選考を行って直接採用を行うケースに対しては、紹介手数料条項の定め方で触れた「オーナーシップ条項」が有効です。

それに加えて、紹介料の発生条件である内定承諾や入社などを正確に把握するために、「紹介者の同意を得ることなく、候補者と直接連絡・採用を行ってはならない」というような条項を入れておくとさらに効果的です。
こうすることにより、直接採用や、クライアントが候補者と口裏を合わせて紹介料を免れようとする行為を防止することにもつながります。

② 紹介料を不当に免れる行為の禁止
上記で触れた口裏合わせなどを含め、「虚偽の報告」「紹介手数料の徴収を妨げる行為」を禁止する条項を入れておきましょう。

典型的には、採用/不採用に関する虚偽の報告を行ったり、退職日や退職理由を偽装するケースを想定していますが、「徴収を妨げる行為」「不当に免れる行為」など、あえて抽象的な文言(意味を広く解釈できる文言)で規定しておくことがポイントです。
こうすることにより、想定していなかった手口や主張をされた際にも違反を指摘しやすくなります。

③ 目的外利用の禁止
他社に候補者情報を提供するなど、採用以外の目的で候補者情報が使用されることを防ぐために、「目的外利用・第三者への開示」を禁止する条項を設定しておきましょう。

上記でも述べた通り、人材ビジネスを運営する企業をクライアントとして人材紹介を行う場合には、特に注意が必要です。

違約金条項
上記の禁止事項とセットで、「違約金条項」を設定しておくことも重要です。
例えば、「虚偽の報告や不当に紹介手数料の徴収を妨げる行為があった場合、紹介手数料の倍額を違約金として請求できる」というような内容です。

この点、不当に免れる行為があった場合、「人材紹介の成立とみなして紹介手数料を請求できる」とだけ定めている契約書をたまに見かけます。
しかし、これで十分な抑止力が担保できるとは言い切れません。「バレても紹介手数料を払えばいいだけ」と思われてしまう可能性があるためです。

違約金条項は実際に請求するよりも、不当な行為の抑止力として機能してもらうことが大きな役割になります。したがって、倍額以上の違約金を設定しておき、「不正な行為をしたら損をする」と思わせることが重要です。

なお、違約金規定は相手方から修正や削除を求められることも多いため、修正要望が出された際にどのように反論するかや、どこまでなら譲歩可能かを予め考えておくことも必要となるでしょう。

禁止事項の条項例

第X条(禁止事項)
1. 委託者は、候補者による内定承諾前において、紹介者の書面による事前の承諾なく、候補者との間で、候補者の雇用条件等その他の事項について直接連絡をしてはならない。やむを得ない事由により、委託者が候補者と連絡をとった場合には、委託者は直ちにその旨を紹介者に報告するものとする。
2. 委託者は、本契約に基づく紹介手数料の支払いを免れるなどの不正な目的で紹介者に対して虚偽の報告を行うなど、紹介者から委託者に対する紹介手数料その他の債務の徴収を不当に妨げる行為または妨げようとする行為を行ってはならない。
3. 委託者は、本契約に基づき紹介者から提供された候補者の個人情報を、委託者の選考および採用の目的でのみ利用するものとし、紹介者の事前の書面による承諾なく当該目的の範囲外に利用し、または第三者に開示・提供してはならないものとする。

第X条(違約金)
1. 委託者が第X条(禁止事項)第1項、第2項の規定に違反して候補者を採用し、または虚偽の報告を行うなどして、本契約に基づく紹介手数料の徴収を不当に妨げる行為を行った場合、委託者は紹介者に対して、本来支払うべき紹介手数料に加えて、当該紹介手数料の倍額に相当する金額を違約金として支払う義務を負う。
2. 委託者が第X条(禁止事項)第3項の規定に違反して、候補者に関する情報を第三者に提供し、または候補者を委託者以外の企業に対して紹介・斡旋等を行うなどの本契約の目的に反する行為を行った場合、委託者は紹介者に対して、違約金として●●円を支払う義務を負う。
3. 本条の違約金の規定は、紹介者が当該違約金額を超える損害を被った場合に、その賠償を委託者に対して請求することを何ら妨げるものではない。

  • 人材紹介契約における違約金について、紹介手数料の約3倍の違約金規定を有効と判断した裁判例があります(東京地裁令和3年3月17日判決・ウエストロー・ジャパン2021WLJPCA03178026)。
  • 目的外利用の違約金は定額とする条項を採用しましたが、「目的外利用により委託者が得た利益の●倍の金額」などと定めるケースもあります。

その他

その他、定めておくとトラブル予防に役に立つ条項を挙げておきます。
必要に応じて入れておきましょう。

・先方企業の求人情報につき、自社の提携先、委託先に情報提供をすることの承諾条項
・先方企業の求人情報を、各種求人サイト等に登録したり、求人情報を公開したりすることの承諾条項
・応募者につき併願(別の企業に応募)することがあり得ることの承諾条項

まとめ

以上、人材紹介契約書を締結するうえで特に注意しておきたいポイントを解説しました。

まとめると、人材紹介契約書を作成したり、相手方企業の契約書をチェックする際には、

紹介料に関する条件(返金規定含む)が正しく記載されているか?
自社がどこまで責任を負うか(あるいは負わないか)が明記されているか?
クライアント側の禁止事項・注意事項を不足なく規定できているか?

に特に注意して頂ければ、後々のトラブルの予防に繋がると思います。

また、契約書ひな型の作成や先方の提示した契約書のチェック等、契約書に関する業務を効率よく回すための仕組みづくりについては、ベンチャー企業にとって必要最小限度の「ミニマル法務部」を立ち上げて運用するための方法を以下の記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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