【起業家・経営者向け】裁判って、どんなことをするの?~支払ってもらえないお金を回収するまで~②
職業柄、「裁判」に関するご依頼を頂くことが多いのですが、
前回の記事の続きです。
(前回の記事はこちら)
↓
裁判って、どんなことをするの?~支払ってもらえないお金を回収するまで~①
今回はいよいよ、裁判の期日で何をするのか、どうやって手続が進んでいくのかをご紹介します。
「答弁書」にはどんなことが書いてある?
前回は、Xさんが11月7日に裁判所に訴状を提出し、12月21日に期日が指定され、その1週間前(12月14日)に、Yさんが「答弁書」という書面を提出してきた、というところまで進みました。
早速、Xさん側は、Yさん側から提出された「答弁書」を確認します。
「原告の請求の棄却(ききゃく)を求める。被告の主張は追って行う。」
短い!!!
でも、実際、こんなもんなんです。
(詳しくは後でご説明しますね。)
ところで、突然、「棄却(ききゃく)」という、難しいワードが登場しました。
訴えは、「お金を支払え」など、相手への「請求」という形を取るのですが、
裁判所に請求を認めてもらうことを請求の「認容(にんよう)」
逆に、請求が認めてもらえないことを請求の「棄却(ききゃく)」といいます。
言い換えれば、認容=原告Xさんの勝訴、棄却=被告Yさんの勝訴、というわけです。
つまり、Yさんの答弁書は、
「私の勝ちという内容の判決を求めます。理由は後で言います。」
ということですね。
「Yさんやる気あるの?」
と思いませんか?
でも実際に、被告が提出する「答弁書」は、こういう内容であることがほとんどです。
まあ、「理由は後で言います」と言ってるわけですから、第1回期日当日、じっくりと理由を聞かせてもらいましょう!
と、行きたいところですが…。
いよいよ、第1回期日!
さあ、いよいよ待ちに待った第1回期日です。
Xさん側の弁護士は、予定の時間に大阪地方裁判所に行き、指定された法廷に入ります。
そのあと、Yさん側の弁護士も法廷に入ってきました。
原告・被告ともに揃いましたので、担当裁判官がやって来ます。
これで、役者は揃いました。
さあ、いよいよ熱い法廷バトルの始まりだ!
と、思いますよね?
実際はこうです(もちろん、あくまで一例です。)。
↓
裁判官 「原告は、訴状の通り陳述(ちんじゅつ、主張を述べるということ)ということでいい
ですか。」
X弁護士 「はい。」
裁判官 「被告は、答弁書の通り陳述ということでいいですか。」
Y弁護士 「はい。」
裁判官 「では、被告は主張を追って行うということですので、次回期日までに被告の主張
を書面で提出して下さい。」
裁判官 「次回期日は平成31年1月25日とします。」
これで終わりです。
そうなんです。
民事訴訟は、基本的には法廷の場で熱い激論を交わすということはしないのです。
(もちろん、案件やその時の状況によっては、することもありますよ。)
言いたいことがあるなら、書面で出しましょう、というのが基本スタイルです。
クライアントにとってみれば、訴状を出してから1~2ケ月経っているのに、
「話が何も進んでないじゃないか!」
と思われても仕方ないと思います。
ですが、残念ながら、ここまでの流れは、普通に行われている、よく見る光景なのです。
2回目以降の期日はどのように進む?
第2回期日が平成31年1月25日と指定されました。
この間に、被告Yさん側は、改めてYさんの言い分を書面にまとめ(「準備書面」と言います。期日で主張する内容を「準備」しておく、というようなイメージです。)、証拠とともに裁判所とXさん側に提出します。
勘がいい方なら、もうなんとなくわかるかも知れませんが、第2回期日の進行も、第1回期日とあまり変わりありません。
裁判官 「被告は、準備書面の通り陳述と言うことでいいですか。」
Y弁護士 「はい。」
裁判官 「原告は、被告の準備書面に反論しますか。」
X弁護士 「はい。」
裁判官 「では、原告は、次回までに被告の主張への反論を書面で提出して下さい。」
大体こんな流れで終わります。
もちろん、場合によるのですが、このような書面によるキャッチボールが何度か続いていく、という感じで、何回か期日が進行していくケースがほとんどです。
なので、この段階では、原告・被告本人が出席することはあまりありません。
私も、「もちろん来て頂いても構いませんが、あまり内容はないですよ。」
という風に、クライアントにはお伝えすることが多いです。
書面の出し合いはいつまで続く?
このように、原告が主張を書面で出し、その内容に被告が反論を書面で提出し、またその内容に原告が反論し…、という感じで、何度か期日が続いていきます。
どのくらいの期間、書面でのキャッチボールが続くかというのは、完全にケースバイケースです。
大体、期日は1ケ月に1回程度開催されますので、短い時で2~3ケ月、
大規模・複雑な事件であれば、書面のやり取りだけで1年以上経っているというケースも、決して珍しくありません。
なぜこのようなことをするのか。
それは、「裁判官が何を判断すればよいか」を明確にするためです。
民事訴訟は、当事者間での「争い」を解決するための制度ですから、裁判官は、まずは双方の主張をよく聞いて、何が「争い」の「ポイント」なのかを見極めます。
例えば、商品の代金を請求する裁判を起こしたところ、相手から、
「そんな商品は買った覚えがありません。」
との反論があれば、争いのポイントは、
「商品を売ったという事実(売買契約)があったか否か」
となります。
しかし、相手の反論が、
「その商品には〇×の点に不備があったので、代金を支払いません。」
という内容だとすれば、 争いのポイントは、
「商品に不備があったか否か」
となります。
さらにさらに、「商品に不備があった」という相手の反論に対し、例えばこちらが、
「確かに不備があったが、それでいいと言って買ったはずだ。」
というように主張すれば、争いのポイントは、
「本当に、相手が商品の不備を知ったうえでそれでいいと言ったのか」
という点に移っていくわけです。
このように、原告・被告双方がお互いの主張を出し合い、裁判官は、何が争いのポイントなのかを見極めていきます。
この、争いのポイントとなる部分を「争点(そうてん)」といい、争点が明確になるまで、書面での主張の出し合いが続きます。
今回のケースでは、第2回期日(平成31年1月25日)の1週間ほど前に、Yさん側から、
「Xさんから受け取った200万円は借りたものではない。もらったお金だ。」
という主張を書いた書面が提出されました。
そして、
第3回期日 平成31年2月22日
第4回期日 平成31年3月22日
第5回期日 平成31年4月26日
にわたり期日が開催され、Xさん、Yさん、それぞれ書面で主張を出し合いました。
その結果、争点は、「Yさんは200万円を借りたのか、もらったのか」
だということが分かり、Xさん・Yさん双方が、お互いに出せる証拠も全て提出しました。
お互いの主張・証拠も出尽くし、争点も明確になりましたので、ここから更に次なるステップへと進んでいきます。
続きは次回です。
シンプルでカスタマイズしやすいWordPressテーマ
※この表示はExUnitの Call To Action 機能を使って固定ページに一括で表示しています。